「俺、夜飯買うからコンビニ寄るわ」
彼はそう言って、私をコンビニへと連れて行った。
綾人くんもコンビニとか行くんだ、とか、そんなことを考えたのは、なんとなくコンビニの俗っぽい雰囲気が、彼に似合わないような気がしたからだった。
中に入ると、真っ先に彼は入り口に置いてある消毒スプレー使って、念入りにアルコールを手に馴染ませていた。強迫じみている彼の行為を見て、私もなんとなく、彼に続いて消毒を試みる。
かごを手に取った綾人くんは値段をろくに見ずに、飲み物や食べ物を乱雑にその中に放り込んだ。さすが、としか言いようがない。
「お前も何か食う? 買ってやるけど」
ふと思い立ったように、彼は私にそう尋ねてくる。
その瞬間、私は硬直した。そういう流れになると思っていなかったからだった。
どうしよう、と思って、私は店内を見回してみる。ここで断ったら、彼は今度こそ不機嫌になる気がする。何としてでも、何かを選ばなければならなかった。
正直言うと何も食べる気にはなれなかったが、妥協に妥協を重ねて、私はマスカット味のゼリー飲料を指差した。これだったら多分、祥平がいなくても口に入れられるだろう。
「これがいい」
「は、そんなので足りるわけないだろ。他にないのかよ」
綾人くんはぴしゃり、と私の言葉を遮った。思わず身が怯む。視線を宙に漂わせながら困っていると、彼はため息をついて、私が指差したゼリー飲料を2つ、手に取った。
胃のあたりが締まる感じがした。全くお腹は空いていなかった。


