性、喰らう夢



「じゃ、あとはよろしくね。私、戻るから」



 彼女は3人の女の子たちにそう言うと、もう一度スマホを弄りながら、その場を後にした。きっと彼女がリーダー格で、私を叩く目の前の3人はその取り巻き、といったところだろうか。

 私に嫌がらせをしていたのは、彼女たちだったのか、と今更になって理解した。


 それにあの子は、祥平に手を出さないでほしいから、と言っていた。

 どうしてここで、祥平の名前が出てくるのだろうか。私と祥平が仲良くしているのが気に入らないのだろうか。でも別に、私と祥平は付き合っているわけではないし、そういった類の行為をしているわけでもない。なのに、どうして。


 まあとにかく、彼女たちが、祥平と親しくしている私に対して嫌悪感を抱いている、ということだろう。だから彼女たちは、私に陰湿で幼稚な嫌がらせをしてくるのだろう。

 彼女たちによる暴力の理由が明らかになると、急に全てがくだらなく思えてきた。さっきまで感じていた全身の恐怖が一気に薄れてきて、私は目の前の彼女たちに興味をなくした。

 そして私は、遠くを眺めながら、今日も夏目先輩の所に行こうかなと考えた。



「ねえ、どこ見てんの?」



 よそ見をしていると、それを気に食わなかったらしいひとりの女の子が、私の足首を思い切り踏みつけた。ローファーのかかとの角が皮膚の中にめり込んでいく。痛かったけれど、私は抵抗せずにじっと、その様子を眺めていた。

 このまま、時が過ぎるのを待とうと思った。そのうち、午後の授業の予鈴が鳴れば、彼女たちは私を解放してくれるだろう。別に時間が経つのを待つだけなら、ひとりで過ごす昼休みと同じじゃないか。


 私は全てを諦め、ただ黙って、彼女たちからの責めを受け続けた。