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靴を隠すとか、無視をするとかいった行為を間接的暴力というのなら、これはどこからどう見ても、直接的暴力といえるだろう。
私は頬に痛みを感じながら、ふと、そんな現実逃避にも似たような考えに耽っていた。
少し前に遡る。
昼休みが始まってすぐに教室を出ようとする私に、クラスの中でも落ち着いた感じの女の子、確か内田さんという名前だった気がするが、とにかく、彼女が私に話しかけてきたのだ。
委員会の用事だか何だか、そんなことを言われて、とにかくついてきてほしい、と言われた。どうせ昼休みなんてただ時間が過ぎるのを待つだけなのだから、と思って、私は二つ返事で了承し、彼女について行った。
多分、はめられたんだと思う。内田さんが私のことを連れてきたのは、校舎裏の埃っぽくてじめじめとした空間だった。こんなところに何の用事があるのだろう、と不思議に思っていると、そこに4人の女の子が現れた。
その中のひとりが、内田さんに向かって、あんた、もう戻っていいよ、と言った。内田さんは気まずそうな顔をしながら、私を置いて走って逃げて行った。
それから、これである。4人の派手な感じの女の子が、私に対して敵意を向けているらしい、ということはわかった。そのうちの3人が詰め寄ってきて、側にあった箒とか壊れたビニール傘を使って、私を殴ってくるものだから、それ以外に解釈の余地はない。
残りのひとりは、そばにある非常階段に腰をかけて、私のことなど興味もなさそうにスマホを弄っていた。それ以外の3人が、よってたかって私のことを、強く、痛めつけてくる。
正直、どうしたら良いかわからなかった。彼女たちが私に攻撃をする理由に検討がつかないのだから、どうすれば事態が改善するのかなんて、想像がつくはずもない。だから、私はそんな責め苦を受け続けるしかなかったのだ。


