「眠れそうになったら、眠るね」
「……ああ、わかった」
祥平は頷いているようだった。私は彼の表情を見なかった。彼がどんな顔をしているか知りたくなかったからだ。
どうせ、ここで眠れるわけがない。そんなことはわかっていたが、祥平を余計に傷つけてしまうような気がして、私は言葉を濁すことしかできなかった。
そして、沈黙が続く。そのまま彼の腕の中に収まっていると、すぐに祥平の静かな寝息が聞こえてきた。どうやら、彼は眠りに落ちてしまったようだった。背中に回る彼の手が、余計に重たくなったような気がする。
私は腕のやり場に困ったので、片方の手を彼の腰に回した。抱きしめているわけではない。ただ、添えているだけだった。
これはきっと、私なりの贖罪なのかもしれない。
いつも私の健康を気にして優しくしてくれる彼に対して、私ができる最大限の感謝の気持ちだった。
祥平、ごめんね。眠れない私でごめん。あなたからの好意に報えない私でごめん。それに、ここまで尽くしてくれる祥平のことを、やっぱりすこし重いなって思ってしまって、ごめん。
静かな部屋の中で、祥平の寝息を聞きながら、そんなことを考える。
私を抱きしめる彼の腕が、すこし強くなった気がする。私はそれを肌で感じながら、あまりにも覚醒しすぎている意識を持て余してしまって、途方もない息苦しさを感じていた。


