祥平は、すこしだけ潤んだ瞳で私のことを見つめている。
私は手を止めて、依央とのメッセージ画面を閉じ、スマホを机に置いた。私は近くにあった大きめのブランケットを携えて、祥平の隣に横たわった。
「祥平、眠たいの?」
ブランケットを祥平にかけながらそう問いかけると、彼はこくりと頷いた。こうやって彼に向かっていると、夏目先輩になったような気分になる。あのひともきっとこうやって、ソファーに横たわる私にあの黒いブランケットをかけているのだろう。
祥平は目をぱちぱちと瞬かせながら、抑揚のない声を出す。
「ご飯食べると、眠くなるじゃん。普通」
もっとこっち来て、と祥平は私の身体を自分の方に引き寄せた。祥平は自分にかけられたブランケットを少しずらして、その中に私を迎え入れてくれる。
こうやって横になって祥平と向かい合わせになると、思ったよりも彼との距離が近いような気がしてくる。祥平はとろんと蕩けたような表情をして、その瞳の中に私の姿を映していた。
彼の手が背中にまわる。昨日、夏目先輩に生徒会室で触れられたときのことがなんとなく思い出されたが、祥平の手にそういった類の下心は感じられなかった。
「祥平」
「ん?」
「祥平って眠いと、そんな顔するんだね」
見慣れない祥平の姿と、骨ばった彼の手の感触を背中に感じながら、私はそんなことを口走った。祥平は、うん、と気の抜けた返事をした。
そして数秒、そのままでいたかと思えば、次に口を開いたのは祥平の方だった。
「お前は、眠くないの?」
どくん、と心臓が跳ねる。
どうして、彼は私を困らせることを言うのだろうか。そんな理不尽な憤りを心のうちにそっと仕舞い込みながら、私は首を縦に振った。


