性、喰らう夢




 祥平が買ってきてくれた野菜スープを咀嚼しているとき、彼は隣でスマホをいじりながら、片手にコンビニの鮭のおにぎりを持っていた。きっと、彼は昼食をとらずにここに来てくれたのだろう。

 すこしだけぬるくなったスープを飲み干して、ご馳走様でした、というと、祥平はこちらを見て心なしか嬉しそうな顔をした。



「よかった、全部食べられて」

「……ありがとう」



 祥平はスマホをテーブルの上に置いて、床にごろり、と寝そべった。いつのまにか、祥平はおにぎりを食べ終えていたらしい。テーブルの上には、おにぎりを包んでいたはずのフィルムの残骸だけが残っている。


 私はそんな祥平の姿を視界の端にとらえながら、空になったスープのカップとフィルムのごみを、近くのゴミ箱に投げ入れた。

 そのときだった。テーブルの上に置いていた私のスマホが、ぼうっと光った。自然に、そちらに視線が行く。



<どういたしまして。それよりも明日、学校来れそうか?>



 そのメッセージの送り主は依央だった。さっき私が送ったメッセージに対する返信が届いている。

 黒髪をふわりと揺らす依央の姿が脳内をちらついた。彼がロッカーから私を引き剥がしてくれたときに感じた、大きくてごつごつした彼の手の感触がふと思い出される。

 私は依央からのメッセージに返信をしようと、スマホのロックを解除した。そして、依央とのメッセージ画面を開く。


 何を送ろうかとすこし迷っていると、急にシャツの裾が引っ張られるような感覚がした。そちらの方を見ると、祥平が寝転びながら、座っている私を見上げている。



「隣、来いよ」