あれから数時間経った頃だろうか。何もすることもなく、ただ横になって休んでいたとき、突然、玄関の扉がコンコン、と2回ノックされた。
平日の昼間にわざわざうちにやってくる奇特なひとは誰だろうか、と少し不思議に思った。母親だったらきっと、黙ってドアを開けるに決まっているのに。
けれど何となく、そのドアのノックの仕方に聞き覚えがあったので、私は玄関に向かって行って、古臭い扉を向こう側に薄く開いた。
「よ、突然ごめん」
「祥平、どうして」
制服姿の祥平は片手にコンビニの袋を携えながら、入っていい? と笑った。断る理由もなかったので、私は彼を招き入れた。
今はまだ、学校の授業があるはずなのに、どうして彼がここに来たのだろうかと不思議に思う。
「早退してきたんだ、お前に何かあったんじゃないかって思って」
「別に、何もなかったよ?」
祥平は、ああそう、まあ何でもいいや、と言って、テーブルの上で袋の中身を広げた。
何もなかったわけではない。けれど、祥平に対して昨日の嫌がらせのことを話す気にはなれなかった。これ以上、心配と不安が入り混じった苦しそうな祥平の表情を見たくなかったからだ。
彼は何も知らずに、単純に学校を休んだ私の体調を心配して、学校を早退してまでここにやって来たらしい。そんな彼の真っ直ぐな優しさが、嬉しいけれども、ほんのすこし重く感じるのは、私の性格が悪いからなのだろうか。


