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「それで、今日はどうしたの?」
生徒会室の鍵を内側からかけながら、夏目先輩はそんな言葉を放った。先輩は鍵を机の上に雑に置いて、私の顔をちらりと見る。
「ロッカーに虫の死骸がたくさん入ってたんです。さすがに気持ち悪くて」
私はいつも通り、壁際のソファーに座った。先輩は私の発した言葉を飲み込むや否や、顔をしかめて嫌悪の表情を浮かべた。
「陰湿さを煮詰めたような嫌がらせだね、それ。入れる方もどんな気持ちでやってるんだろうね」
「……」
夏目先輩は棚から黒いブランケットを取り出した。それを広げながら、先輩はこちらに向かってくる。
「きみがさっき言っていた、気持ち悪いって言うのは、悪意の方? それとも、虫の方?」
「……虫の方です」
やっぱりきみ、変わってるね、と先輩は言った。ソファーに横たわりながら、そうかもしれないです、と返事をする。
早くあの気持ちの悪い光景から意識を引きはがしたい。だから、私は今日ここに来たのだ。
けれど私はまだ、あの後自分のロッカーを見ることができていない。依央は、片付けておくから、なんて言っていたけれど、彼の言葉が本当かどうかもわからない。もしかしたら今もなお、あのロッカーの中にはまだあの地獄のような光景が広がっているのかもしれないと思うと、憂鬱になった。
「……夏目先輩、お願いがあるんですけど」
「ん、どうしたの?」
「私のロッカー、見てきてくれませんか」
私が眠った後で良いので、と付け加えると、先輩は、ええ、と少しだけ嫌そうな顔をしたが、少しだけ考え込んだ後に、
「まあ、良いよ。何番のロッカーだっけ?」
と言って、私の頼みを承諾してくれた。


