体育館裏の人気のない場所に座り込んで、ゼリー飲料の中身をずるり、と吸い上げた。当たり障りのないマスカットの味にすぐに飽きてしまって、私は中身を半分以上残したまま、キャップを閉めた。
「体調、どうだ?」
隣で菓子パンを貪る祥平が、私にそんな言葉を投げてくる。いつも通り、と返すと、祥平は安心したような、それでもやっぱり心配しているような、何とも言えない表情をしてみせた。
これ食う? といって祥平は、食べかけの菓子パンをこちらに向けてきた。私は祥平の方に身体を寄せて、祥平の手に持たれたままのパンにかぶりついた。砂糖の甘ったるい味が何だか気持ち悪かったので、一口だけ咀嚼した後に、あとはいらない、と言った。
別に毎日、こうやって祥平と昼休みを共に過ごしているわけではなかった。
昼休みになると、クラス内で幅を利かせている派手な感じのグループの女の子たちが私の机を使いたがるので、私は教室から出るしかないのだ。なので私は毎日人目につかない場所で、昼休みの45分間が過ぎるのを待っているしかなかった。
祥平はたまに、私のところにふらっと現れては、一緒にご飯を食べてくれることがある。それは毎日というわけでもないし、曜日が決まっているわけでもない。忘れたころに気まぐれに現れては、私にお弁当とか、コンビニのパンとかいったものを分けてくれるのだ。
「てかそっちのクラス、次体育じゃねえの?」
「あ、そうかも」
祥平にそう言われてスマホで時間を確認する。昼休みが終わるまでにはあと20分ほど時間があったが、今から着替えて移動することを考えると、そろそろ行かなければならない。


