性、喰らう夢




 私たちの長い食事が始まってから、どれくらいの時間が経っただろうか。日が東から南に、そして西に傾いてくるまで、私は祥平とずっと一緒に過ごしていた。


 祥平は小鉢の中身を入れ替えたり、私の気に行った料理を足したりしながら、私の話し相手をしてくれた。いつの間にか、テーブルの上の小鉢の中身はほとんどなくなっていた。



「今日は結構食べられたみたいだな」



 祥平は使い終わった食器を片付けながら、ぽつりと呟いた。



「うん、美味しかった」

「そう。良かった」



 彼は食器の片付けを終えると、タオルで自分の手を拭いて、捲っていた服の袖をもとに戻しながら、私の隣に戻ってきた。



「俺がここに住めるようになったら、毎日ちゃんと食べさせてやれるのに」

「……そんな」

「ごめん、急に変なこと言って」



 部屋の中にすこしだけ、湿っぽい空気が流れる。気まずくなって祥平から目を逸らすと、彼はばつの悪そうな顔をした。

 じゃあ俺、帰るから、といって祥平は、端の方に畳んで置いてあった上着を羽織った。



「そっちのビニールの中に、ゼリー飲料何個か入れてあるから、俺来れないときはそれ飲んどけよ。それくらいならひとりでも飲めるだろ?」

「わかった。ごめん、そこまでさせてしまって」

「いいから。俺がいないときに倒れたりすんなよ」



 祥平は私の頭をぐしゃりと、雑に撫でた。

 また呼んで、といって彼は部屋を出て行った。私は部屋でひとりになった。すこしだけ、祥平の残り香がした。