性、喰らう夢




 しばらくすると、祥平はお盆に小鉢をたくさん並べてこちらにやって来て、私の前にそれらをひとつずつ丁寧に並べた。

 野菜炒めとか、冷奴とか、煮物とか、そういったものが少しずつ入っている。それらを私の方に寄せたあと、祥平は私の隣に座って、自分の前には同じスーパーで買ったであろう海苔弁当をどかんと置いた。


 祥平は、私のことをよく理解していると思う。


 目の前にひとつの料理が大皿にまとまって置かれていると、全部食べなければいけないという義務感が生まれて苦しいと、昔彼にこぼしたことがあった。

 祥平は私が発した些細な言葉を、未だに覚えているらしい。彼は毎回、小鉢に少しずつの料理を分けてくれて、そんな私の負担感を軽減してくれる。

 そのことについて感謝を述べると、彼はいつも、少しずつでも良いから色々なものを食べてバランスとってほしいだけ、とぶっきらぼうに言うのだ。


 私が途中で食べる手を止めたとしても、彼が私を咎めることはない。私はそれに甘えて、一口食べて、休憩して、そしてまたすこしずつ料理を口にする、という行いを繰り返す。だから、私と祥平の食事はなにかと時間がかかる。



「……いただきます」

「どうぞ。食べられそうなやつあるか?」

「うん、ありがとう」



 私が冷奴に箸を伸ばしたのを見て、祥平は安心した表情を浮かべながら、彼は自分の分のお弁当に手をつけた。