性、喰らう夢




 両手を拘束されたまま文字を打つのは大変だったが、音声入力などをうまく使えばなんとかなりそうだった。彼にメッセージを送った後、私は手持ち無沙汰に時計を確認した。

 時刻はまだ、朝のSHRが始まる前の時間だった。依央がこの時間にスマホを見ていればいいのだが、確実とは言えない。


 私はその場に立ち尽くしたまま、ずっと画面を眺めていた。

 もしこれがうまくいかなかったら、依央が私に返信をくれなかったら、私は本格的にここで緩やかに死んでいくことになるだろう。

 そんな、一抹の不安を抱えながら画面を眺めている、そのときだった。



<どういうこと?>



 そんな、簡素な文面が突如として画面の左側に現れた。依央が、返信をくれたみたいだった。

 私は不自由な手で画面に触れながら、音声入力を使って画面に文字を打ち込んでいった。



<今、綾人くんの家に、監禁、というか、軟禁されてるの>

<本気で言ってる? お前が学校休んでたことと関係あるのか?>



 彼は事態をうまく理解できていないみたいだった。確かに、当たり前と言ったら当たり前だ。急にこんな突拍子もないことを、SNSのダイレクトメッセージで送って来られたら、誰だってきっと混乱するはずだ。

 私は、丁寧に自分の状況を彼に説明した。



 金曜日の夜に、綾人くんに呼び出されたこと。彼の家に行ったら、彼に嫌がらせのことを問い詰められたこと。嫌がらせのことについて正直に話したら、次の日の朝方に薬を盛られて眠ってしまい、起きたら手足が拘束されていたこと。今は手だけを拘束されていて、綾人くんが置いていったタブレット端末を使って依央にメッセージを送っていること。

 そんな一連の流れを、何とか彼に伝える。