そのまま寝たふりを続けていると、そのうち綾人くんは少しだけ物音を立ててから、玄関から外に出て行ったみたいだった。きっと、学校に行ったのだろう。
私はその場で少しだけ様子をうかがってから、ゆっくりと目を開けた。
部屋はしんと静まり返っている。彼を出し抜いたのは初めてだった。何だか悪いことをしている気分になるが、そもそも私が閉じ込められている側なので、致し方がないだろう。
昨日と同じように、私の両足の拘束は外されたままになっていた。両手首は依然として結束バンドで留められているままなので少し不自由だったが、足が動くだけマシだった。
私は、綾人くんが使っている学習机の前に立った。昨日と同じ場所に、まったく同じ状態でタブレット端末が、充電ケーブルにつながれたまま置かれている。
私は意を決して、その画面に触れた。
ぼうっと、白い画面が点く。ロック画面は真っ白だった。こんなところまで無機質なのか、と感心する。
そしてもう一度画面に触れると、次はロックの解除を求められた。
「あ……」
困ったことになったが、確かに当たり前のはずだった。私に逃げられるのをあんなにも恐れている彼が、こんな端末を部屋に残しても大丈夫だと思うのは、きっと私にこのロックが開けられないと思っていたからなのだろう。
綾人くんの誕生日、いつだったけ、と思いながら、なんとなく彼の誕生日の数字を打ち込んでみる。けれど、パスコードは間違っているようだった。


