身にまとっているものを全て外してから彼のほうを振り返る。綾人くんは私の身体を見ているだけで、自分が服を脱ぐわけでもなかった。
てっきり、彼も一緒に入ってくるかと思ったのに。彼が何をしたいのかが正直よくわからず、私はその場で固まってしまう。
「綾人くん……」
何でここにいるの? という私の疑問を察したかのように、彼は口を開いた。
「正直、拘束を完全に解いているときがお前にとって一番の狙い目だろうから、一応」
「そんな」
彼は全く私のことを信用していないらしい。確かに私はここから出ることを考えているけれど、綾人くんにそんなことを言われるのは少しだけ癪に障った。けれど私は、何も言うことができなかった。
「……早く行けよ」
「うん……」
彼に背を向けて、私は浴室に入った。
なんだか体調が優れない。綾人くんに促されるがままにゼリー飲料を飲まされたり、薬を使って無理やり眠らされたりしているけれど、きっとそれでは、栄養や休息をとるという観点からいえば些か不十分なのだろう。
せいぜい、あと3日持てばいい方だろうと思った。今はまだ少し落ち着いた状態を保てているが、このまま時間だけが流れていったら、私の心は本格的に壊れてしまう気がする。
私はあのタブレット端末のことを想像した。あれが使えれば、きっと外に出られるはずだ。
明日は月曜日。今日の調子だと綾人くんはきっと、昼間は学校に行くはずだ。私が行動できるチャンスは、明日の昼ということになるだろう。たぶん、また朝方になったら彼は私に薬を飲ませるだろうから、それさえ回避できれば良いのだが。
そんなことを悶々と考えながら、私は痣だらけの身体を丁寧に、丁寧に擦った。


