綾人くんは少しだけ疲れた様子だったが、いつもと同じように入念に手を洗ってから、私のところへやってきた。
「なあお前、風呂入ってくれない? そろそろ」
「あ、ごめんなさい……」
どちらかといえば、彼に拘束されているからこそお風呂に入ることができていなかったのだが、私はなぜか謝罪の言葉をこぼしていた。
確かに彼にとっては、いくら外に出ていないとはいえ、2日もお風呂に入っていないひとを自分のベッドに寝かせることに抵抗があるのだろう。
でも、この状態でどうやって? と彼に問うと、彼は黙って私の背中を押して、私を脱衣所のほうに促した。
冷たい脱衣所の中で、彼ははさみを使って、私の手首に絡められた結束バンドをぱちん、と切った。急に腕の動きが解放されて、なんだか変な感じがした。
自由になった腕を少しだけプラプラと動かしながら、身体の感覚を確かめる。
「あの、綾人くん」
「何」
「えっと、服脱ぐから、そっち行っててほしい、ていうか……」
ほら、お風呂入るから、と付け加える。けれど彼は何でもなさそうな顔をしながら、
「どうして、俺がいたらだめなわけ?」
と、そんな屁理屈にも似たようなことを言って、私を困らせた。
ていうか俺、お前の裸なんていつも見てるんだし、なんてことを、彼は真面目な顔でそう言ってのけるのだ。
それとこれとは、また別の話じゃないかと思った。けれど目の前の彼にそんなことを言っても無駄だということはわかっていたので、私は彼に背を向けながら、ゆっくりと下着を外していった。


