性、喰らう夢






 カーテンの隙間から差し込む光が、朝を告げている。

 綾人くんはやっと、椅子から立ち上がった。

 彼は今まで、ずっと一人でこうやって勉強をしていたのだろうか。普通だったら気が狂いそうになるだろう。彼の受験に対する執念はやっぱり病的な性質を持ち合わせているように思える。



「お前、起きられるか」



 彼はぼんやりとした表情を顔に携えながら、ベッドに横たわる私をゆっくりと抱き起こした。寝返りも打てずにずっと同じ格好でいたので、片腕と片足がひどく痺れていた。思わずバランスを崩してしまったが、綾人くんは私を支えてくれる。

 これじゃまるで、私は彼のお人形みたいだ。

 綾人くんはゼリー飲料をどこからか持ってきて、その飲み口を私の唇に優しく押し当てる。さすがにふらふらとしていて生命の危機を感じたので、私は必死になってそれを全て吸い上げた。



「よかった、飲んでくれなかったらどうしようかと思った」

「そんな……」



 彼があまりにも優しい表情をしているので、私は混乱した。私に優しくしたいのなら、今すぐにでも私を解放してくれれば良いのに、と思ってしまう私は冷たい人間なのだろうか。



「じゃあ、これ飲んで」



 綾人くんは手のひらに2つ、錠剤をのせて私の顔を覗き込んできた。きっと、昨日飲まされたものと同じ薬だろう。私は昨日見た嫌な夢を思い出して、頭を横に振った。

 すると彼は、さっきまでとは一変してひどく歪んだ表情をしてみせた。悲嘆と絶望と怒りが混ざった、そんな負の感情がひしひしと伝わってくる。