「俺、勉強してるから何かあったら言って」
ベッドに横たわる私に向かってそう言い放った綾人くんは、ベッドのそばに置いてある真っ白の学習机に向かった。1ミリの乱れもなく置かれている大学受験用の赤本が、白い机を背景にひときわ目立って見える。
「綾人くん……」
「なに」
「ちゃんと話したいの、綾人くんと」
お前、俺に勉強させる気ないの? と悪態をつきながらも、彼は椅子をくるりとこちらに向けてこちらを見ると、頬杖をついた。
「何を話したいわけ?」
「さっきも聞いたけど、どうしてこんなことをするのかな、と思って」
「じゃあ俺もさっきと同じこと言うけど、お前を守るためなんだって。それくらいわかれよ」
守るって、いじめから? と尋ねると、彼はうざったそうにしながら、それ以外に何があんだよ、と言って眉を寄せた。
「どうして、綾人くんがそこまでしてくれるの?」
私がそんなことを言い放ったとき、彼は痛いところを突かれたのか、少しだけ言葉を詰まらせた。そして彼はため息をつきながら、椅子から立ち上がって私のいるベッドへと近づいてくる。
彼はベッドのそばにしゃがみ込んで、顔を私に近づけた。もう少しで唇同士が触れ合いそうな距離感だった。彼は私に目を合わせながら、唇をゆっくり動かした。
「お前はずるいよな。そんな理由、少し考えれば想像つくだろうに」


