性、喰らう夢



 綾人くんは、私をずっとここに閉じ込めておくつもりなのだろうか。

 彼は、私を守るため、と言っていた。それはきっと、昨日の会話から察するに、私を学校でのいじめから守るため、ということだと思う。

 確かにここに居れば、私が他の誰かから嫌がらせを受けるということはなくなるだろう。けれど、ずっとここにいたら、私はそれこそ、緩やかに死に近づいていく気がする。身体的にも、精神的にもだ。

 ここから出ないと、という思いだけは確かにあった。何とかする方法はないだろうかと思考を巡らせるも、有効な手立ては思いつかない。



 つまずきそうになりながら、何とか自由な手を使ってトイレの扉を開けると、それに気づいた綾人くんがすぐにこちらを向いて、結束バンドを片手にやってくる。



「綾人くん、せめて前にしてほしい、かも」



 そう言いながら彼に両手首を差し出すと、彼は一瞬何かを考えるような素振りを見せたが、わかった、と私の願いを聞き入れてくれた。

 従順に、下手に出れば、彼は私の言葉に耳を傾けてくれる。そういう、私と綾人くんとの間で積み上げてきた細かい折り合いのつけ方は、まだ通用するらしい。


 身体の前側で腕が拘束されると、少しだけ自由度が増した。これだったら、横になった状態からひとりで起き上がることができそうだし、ゼリー飲料くらいだったら自分で飲むことができそうだ。


 彼はもう一度私を抱きかかえて、ベッドへと私を下ろした。窓の外は徐々に明るさを失ってきて、もう夜になるところだった。