『オレらの場合は、お互いを守られたらいいなって思うんです。ミズカさんの言うとおり、さすがにあいつには勝てっこないですし。でも、ある程度ならオレも守ってやれますから。勿論限界ならあいつの手も借ります。オレは、一方的なものではなくて、あいつのことを気持ちを尊重したいんです。あいつと一緒に、オレはこれから歩いて行きたいんで。だからもし――――……』
「オレは、その言葉を聞いて安心した。何があってもお前らなら大丈夫なんだろうってな」
「ミズカさん……」
「どうだ? 聞いてみての感想は……って、訊くのは野暮か」
「わたしね、もしかしたら本当に、ヒナタくんとはお別れた方がいいのかもしれないって思ってたんだ」
「……は? どうして」
「変わってしまったと、思ったから」
『……だからもし、傷だらけで帰ってくるようなことがあれば。……回復魔法くらい、かけてあげたいじゃないですか』
それなら、ヒナタくんがあの時――
【あおい、みたいになりたい……かな】
あんなこと言ったのは……。
「ばーか。変わらない奴なんかいねえよ」
「……あは」
乾いた笑い声と一緒に、ひとしずく、静かに伝って落ちていった。
「おい、どこ行く気だ」
「いやあ、ちょっとヒナタくんちまでひとっ走りしてこうかと」
「あーこりゃまた熱が上がってきたな。よし、大人しく寝ろ」
「はーなーしーてー」
窓から飛び降りようとしたわたしは首根っこを掴まれ、続けてベッドに軽々と放り投げられた。どうやら、すぐ立ち上がる前に完全に押さえ込みを決められるくらいには、本当に熱が上がってきているらしい。不覚。
「違う。馬鹿な考えと阿呆な行動でそう判断した」
なんという散々な言い種か。仮にも育ての親だというのにっ。
「けほっげほっ……」
「言わんこっちゃねえ」
「ごめんちゃい」
「暫くは外出禁止。安静にしてろ。ひなたにウイルス撒き散らしてえのか」
「大人しくしてます……」
「大丈夫だ。今は治すとこ早く治して、することさっさと終わらせろ」
あいつは絶対、逃げたりしねえよ。
マスクを付け直したわたしが大人しくベッドに入ったのを確認すると、「もう一本飲み物持ってくる」と、大欠伸しながら出て行――――
「ああそうだ、明日もシントくんが様子見に来るって言ってたから、宜しく頼んでおいた」
「はーい、わかったー」
「……しんどかったら我慢せずにすぐに言えよ」
「あはは、はーい……」
こうとしたところを引き返して、頬や喉元に触れたミズカさんは僅かに眉を顰め、「早く元気になれよ」と小さくこぼしてから、部屋を出て行った。
……少しだけ。ほんの少しだけ、その曲がった背中に、涙が出そうになった。
(頑張って、早く治そう。まずはそれからだ)
布団を掛け直して目をつむると、すぐに眠気がやってきた。多分今日は、素敵な夢が見られるだろう。
そう思いつつ、窓に降り積もる雪に、そっと願いを込めた。



