――――――…………
――――……
「……さて。そろそろ寝ますかね」
そしてそれは、電気を消した時に起こった。
ベッドに入って暫くすると、廊下がギシ……と、音を立てたのだ。寝ているみんなを起こしてしまわないよう、慎重な歩調で。そのあと、音はトントンと軽快に階段を下りていく。
(……アイくん?)
二階で寝ているのはわたしとアイくんだけだ。だから、足音の主もきっと彼だろうということは、容易に予想がつくが……。
(……まさか泥棒じゃないよね)
ちょっと不安になった。
まさか、二階の窓から侵入? いや、わたしならできないことはない。シズルさんもだ。
(でももし急用があったとしても、入ってくるならわたしの部屋の窓だろうし……)
さすがの彼でも、こんな時間に他人に迷惑をかけるようなことはしないだろう。
ぶつぶつ零しながら少し胸騒ぎがしたわたしは、用心して取り敢えず身近にあった折り畳み傘を手に取り、ゆっくりと部屋を出てみることにした。
(アイくんの部屋は……あ、ちょっと開いてる)
やっぱりアイくんだったか。心配して損した。
もしかしたら喉でも渇いたのかも知れない。そう思って、護身用特大ハリセンを直そうとした時だった。
「ごめん! 遅くなった!」
「いつまで待たせるの」
それらは、聞き間違えかと思うほどの、本当に微かな声。
「一時間も遅刻とか有り得ないんだけど」
「ごめん。あおいさんの部屋、まだ電気点いてて出てこられなかったんだって」
「ったく、夜更かしすんなっつったのに」
「……ねえ九条くん」
「何」
「夜更かしの原因、まさか君じゃないよね」
「は? 何の話」
「だ、だから、あの寝付きのいいあおいさんが、こんな時間まで寝られなかったのは」
「何言ってんの。意味わかんないんだけど。あいつが言ってたでしょ。目一杯お腹さすってたよー便所で」
「……! やっぱりあおいさんの部屋にいたんだ!」
あーあ、バレちゃった。
胸騒ぎの原因はこれか。というか、二人してこんな夜遅くに何を……?
「それじゃ行こっか。負けた方は勝った方乗せて腕立てだからね」
「よいドン」
「え!? ちょっと九条くん! フライングはズルいって!」
それに……なんで二人とも、道着なんか着てるの?
……何だったのかな今のは。夢? 夢……かな。多分。
「……いひゃい……」
どうやら自分のほっぺは、正常に作動しているようだ。
一応アイくんの部屋も覗いてみたけど、やはり彼の姿はどこにもない。見間違ってたわけではなさそうだ。あとは……。
――――……
「……さて。そろそろ寝ますかね」
そしてそれは、電気を消した時に起こった。
ベッドに入って暫くすると、廊下がギシ……と、音を立てたのだ。寝ているみんなを起こしてしまわないよう、慎重な歩調で。そのあと、音はトントンと軽快に階段を下りていく。
(……アイくん?)
二階で寝ているのはわたしとアイくんだけだ。だから、足音の主もきっと彼だろうということは、容易に予想がつくが……。
(……まさか泥棒じゃないよね)
ちょっと不安になった。
まさか、二階の窓から侵入? いや、わたしならできないことはない。シズルさんもだ。
(でももし急用があったとしても、入ってくるならわたしの部屋の窓だろうし……)
さすがの彼でも、こんな時間に他人に迷惑をかけるようなことはしないだろう。
ぶつぶつ零しながら少し胸騒ぎがしたわたしは、用心して取り敢えず身近にあった折り畳み傘を手に取り、ゆっくりと部屋を出てみることにした。
(アイくんの部屋は……あ、ちょっと開いてる)
やっぱりアイくんだったか。心配して損した。
もしかしたら喉でも渇いたのかも知れない。そう思って、護身用特大ハリセンを直そうとした時だった。
「ごめん! 遅くなった!」
「いつまで待たせるの」
それらは、聞き間違えかと思うほどの、本当に微かな声。
「一時間も遅刻とか有り得ないんだけど」
「ごめん。あおいさんの部屋、まだ電気点いてて出てこられなかったんだって」
「ったく、夜更かしすんなっつったのに」
「……ねえ九条くん」
「何」
「夜更かしの原因、まさか君じゃないよね」
「は? 何の話」
「だ、だから、あの寝付きのいいあおいさんが、こんな時間まで寝られなかったのは」
「何言ってんの。意味わかんないんだけど。あいつが言ってたでしょ。目一杯お腹さすってたよー便所で」
「……! やっぱりあおいさんの部屋にいたんだ!」
あーあ、バレちゃった。
胸騒ぎの原因はこれか。というか、二人してこんな夜遅くに何を……?
「それじゃ行こっか。負けた方は勝った方乗せて腕立てだからね」
「よいドン」
「え!? ちょっと九条くん! フライングはズルいって!」
それに……なんで二人とも、道着なんか着てるの?
……何だったのかな今のは。夢? 夢……かな。多分。
「……いひゃい……」
どうやら自分のほっぺは、正常に作動しているようだ。
一応アイくんの部屋も覗いてみたけど、やはり彼の姿はどこにもない。見間違ってたわけではなさそうだ。あとは……。



