すべての花へそして君へ③

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「……国内の政治・経済・社会の情勢はまあこんな感じか」

(ま、回答というかトドメというか……)

「ちょっと、聞いてなかったってオチはやめてよ」

「大丈夫大丈夫。ちゃんと聞いてたよ」


 その後短い挨拶を済ませたわたしが、こんなにも友達たちと話せたのはいつ振りだろうかと、考えていたのも束の間。
 気付かない振りをしていたけれど、どうやらツバサくんの言うとおり、体力的にもそして精神的にも結構きていたらしく、そのまま傾れ込むようにベッドへと倒れた。
 ひとつ息を吐くとどっと体が重くなり、このまますぐに落ちてしまうとわかっていたけれど。


『……最後に、一度だけ……』


 気付けばなけなしの力を振り絞り、スマホに手を伸ばしていた。

 と、言うわけで。朝起きたらスマホは握り締めていたが、そのまま意識を手放したんだ。掛け布団も何も掛けているわけがない。そりゃ馬鹿でも喉痛くなるわ。


「国際情勢も、これくらいか。正直もっと風当たりが悪くなるんじゃないかと思ったけどね」

「そうだね。ここまでで済んでよかった」

「奇跡と言っても不思議じゃない値だよ? 裏があるんじゃないかと、俺は逆に不審に思う」

「だからってわからないことをここで悩んだところでどうしようもない。今は素直に喜んでおこう?」


 ――嘗て、世界を手に入れようとしたおぞましい計画は破れ、至る所においてセキュリティーの強化がなされていった。また、それだけではなく。古くからあるもの、新しくできたもの、各々の場所で根強い信頼関係を築くようになってきたという。
 今回の件が内部による犯行が主だったためか、互いの状況を確認するよう視野を拡大。個々の能力や意欲の向上にも繋がっているとのこと。勿論、シントの客観的意見だけど。


「ああそれと、造船の小鳥遊(たかなし)さんだけど」

「うん。パーティーがあるんでしょ?」

「そうそう。船上パーティーだって」

「招待状来てたけど……返事出さなきゃ」

「じゃあ俺もパス」

「何も言ってないんだけどなあ」

「つうかあの仲でしょ?」

「デスクワークもいいけど、たまには顔出すんだよ?」


 これから幸せなことが沢山起きて、世界をもっと明るくして欲しい。そんなことを、切に願った。

 それから、案の定避けていた話題に。


「絶対何かしでかすと思ってた! けど、まさか襲いかかるとは」

「撃退してやったけどね」

「いつ、どこで」

「秋くらい。百合ヶ丘で」

「何人。顔と名前」

「十人前後。顔は覚えてるけど名前はわかんない」

「シフト確認したら、候補の奴らの個人情報片っ端から送るわ」

「しなくていいから仕事をしなさい」