「……母さん」
「ん?」
この人の武勇伝を隈無く綴るには、きっとこれからまだまだ時間がかかりそうだけれど。
「……ありがとう」
「……ふふ。どういたしまして?」
でも、いつか絶対に書き上げたい。
そして書き上げたなら、一番に見て欲しい。
「今日は何の話にする?」
「んー。……タンスに小指ぶつけた話とか?」
「――!? ぶ、ぶつけてなんかないよー? しーくん、誰かと勘違いしてるんじゃないのかなー?」
「あんなのただの迷信でしょ? 大丈夫大丈夫。朝日向の株が暴落したわけじゃあるまいし」
「そ、そんなこと言ってたら本当になっちゃうかもだよお……」
「でも実際になったわけじゃないし。父さんもぶつけてたけど、『大丈夫だから心配すんな』って言ってたよ? 涙目で」
「その大丈夫は、そういう意味での大丈夫ではないと思うのだけどな……」
「……ふはっ。じゃあさ、やっぱりあの本の続きからがいいな」
そして、いつか誰かに。たった一人でもいいから読んで欲しい。
すべては、この笑顔を届けるために。ほんの小さな幸せを乗せて。
どこかで誰かが、“花の便り”を書いているんだってことを。



