すべての花へそして君へ③


「……母さん」

「ん?」


 この人の武勇伝を隈無く綴るには、きっとこれからまだまだ時間がかかりそうだけれど。


「……ありがとう」

「……ふふ。どういたしまして?」


 でも、いつか絶対に書き上げたい。
 そして書き上げたなら、一番に見て欲しい。


「今日は何の話にする?」

「んー。……タンスに小指ぶつけた話とか?」

「――!? ぶ、ぶつけてなんかないよー? しーくん、誰かと勘違いしてるんじゃないのかなー?」

「あんなのただの迷信でしょ? 大丈夫大丈夫。朝日向の株が暴落したわけじゃあるまいし」

「そ、そんなこと言ってたら本当になっちゃうかもだよお……」

「でも実際になったわけじゃないし。父さんもぶつけてたけど、『大丈夫だから心配すんな』って言ってたよ? 涙目で」

「その大丈夫は、そういう意味での大丈夫ではないと思うのだけどな……」

「……ふはっ。じゃあさ、やっぱりあの本の続きからがいいな」


 そして、いつか誰かに。たった一人でもいいから読んで欲しい。


 すべては、この笑顔を届けるために。ほんの小さな幸せを乗せて。
 どこかで誰かが、“花の便り”を書いているんだってことを。