――――――…………
――――……
「……え?」
これは何か? 待ち合わせ中に爆睡したからか? 横っ腹を抓ったからか? それとも、地味に痛かった拳骨の仕返しに、地味に何発も鳩尾へパンチを入れていたせいか?
「やっぱりお前基準だったら、俺みたいな一般人は真っ先にあの世行きだな」
容赦なく、ヘルメットは取っ払われた。
もしかしたら見間違いかも……なんて希望をヘルメットに託していたけれど、どうやら現実らしい。
見覚えのある立派な家屋。表札には〈九条〉と、間違いなく書かれている。とんだ仕打ちだ。
「……か、帰るって」
「俺んちにな」
「わ、わたしも家に帰る……!」
「寝てたくせに」
「つ、ツバサくんだって遅れて」
「だってまだ話し足りねえもん」
「だったら聞くよ! 今すぐ聞く! ここで聞……いや、やっぱり駅で!」
「会いたい奴いるだろ」
「あ、……明日は朝ご飯が」
「いいだろ一日くらい。連絡入れとけ、なんなら俺が入れといてやる」
「御馳走、作ろうと思ったのに……」
「じゃあ、明日の朝は楽しみだな」
「……反省したのに」
「意味わかんねえこと言ってないで行くぞ」
そしてどうやら逃げられないらしい。
「ま、まだ心の準備ができてない」
「だからって植木鉢に隠れても変わんねえぞ」
「は、話さなくていいんだよわたしは。一目見るだけで……なんなら屋根裏に穴空けてそこからでいいから」
「だからって人んちの壁上ろうとするな」
「取り敢えず真っ当な人間の発想だけは保て」素っ気なくそれだけ言って、彼は容赦なく扉を開けた。
ただいまと、彼の声に奥の方からパタパタと足音が近付いてくる。
「おかえりなさいつばちゃ、……あらら。今日はつばさちゃんなのね!」
「ただいま母さん。まあ、ちょっと訳あって」
「わけ? あら」
「こ、こんば――……ひっ!?」
その時、タイミングがいいのか悪いのか。背後の玄関の扉が、もう一度開いた。
「賑やかだと思ったら。なんだ、君だったか」
「こ、こんばんはトウセイさん」
「おかえりなさい、あなた」
「ああ、ただい……どうしたんだ翼、その恰好は」
「すぐ着替えます。訳は、あとでちゃんと話すので」
それからその場で三人が、あれやこれやと話をしていたが、完全アウェイのわたしはというと居ても立っても居られず。気付けば、口から衝いて出ていた。
「あの、ヒナタくんは……」
「あら。一緒じゃないの?」
「え? い、いえ」
「てっきりあおいちゃんの後ろに隠れてるのかと思っちゃったわ」
ワカバさん、相変わらず可愛い発想でいらっしゃる。
……元気そうでよかった。
「母さん、今日はあいつチカの家って」
「エ」
……聞いてませんけど?
「あら、そうだったのね」
「んで、今日こいつ泊まってくから」
聞いてませんケド?? そんな気はしたけど。
「夕ご飯は?」
「まだよ。みんなで食べましょうっ」
とんとん拍子に話が進んでいっている中、わたしだけが取り残されていた。ビックリしすぎて最早冷静だ。
「……まあ折角だ。ゆっくりしていきなさい」
トウセイさん、いろいろ気遣ってくださりありがとうございます。
――――……
「……え?」
これは何か? 待ち合わせ中に爆睡したからか? 横っ腹を抓ったからか? それとも、地味に痛かった拳骨の仕返しに、地味に何発も鳩尾へパンチを入れていたせいか?
「やっぱりお前基準だったら、俺みたいな一般人は真っ先にあの世行きだな」
容赦なく、ヘルメットは取っ払われた。
もしかしたら見間違いかも……なんて希望をヘルメットに託していたけれど、どうやら現実らしい。
見覚えのある立派な家屋。表札には〈九条〉と、間違いなく書かれている。とんだ仕打ちだ。
「……か、帰るって」
「俺んちにな」
「わ、わたしも家に帰る……!」
「寝てたくせに」
「つ、ツバサくんだって遅れて」
「だってまだ話し足りねえもん」
「だったら聞くよ! 今すぐ聞く! ここで聞……いや、やっぱり駅で!」
「会いたい奴いるだろ」
「あ、……明日は朝ご飯が」
「いいだろ一日くらい。連絡入れとけ、なんなら俺が入れといてやる」
「御馳走、作ろうと思ったのに……」
「じゃあ、明日の朝は楽しみだな」
「……反省したのに」
「意味わかんねえこと言ってないで行くぞ」
そしてどうやら逃げられないらしい。
「ま、まだ心の準備ができてない」
「だからって植木鉢に隠れても変わんねえぞ」
「は、話さなくていいんだよわたしは。一目見るだけで……なんなら屋根裏に穴空けてそこからでいいから」
「だからって人んちの壁上ろうとするな」
「取り敢えず真っ当な人間の発想だけは保て」素っ気なくそれだけ言って、彼は容赦なく扉を開けた。
ただいまと、彼の声に奥の方からパタパタと足音が近付いてくる。
「おかえりなさいつばちゃ、……あらら。今日はつばさちゃんなのね!」
「ただいま母さん。まあ、ちょっと訳あって」
「わけ? あら」
「こ、こんば――……ひっ!?」
その時、タイミングがいいのか悪いのか。背後の玄関の扉が、もう一度開いた。
「賑やかだと思ったら。なんだ、君だったか」
「こ、こんばんはトウセイさん」
「おかえりなさい、あなた」
「ああ、ただい……どうしたんだ翼、その恰好は」
「すぐ着替えます。訳は、あとでちゃんと話すので」
それからその場で三人が、あれやこれやと話をしていたが、完全アウェイのわたしはというと居ても立っても居られず。気付けば、口から衝いて出ていた。
「あの、ヒナタくんは……」
「あら。一緒じゃないの?」
「え? い、いえ」
「てっきりあおいちゃんの後ろに隠れてるのかと思っちゃったわ」
ワカバさん、相変わらず可愛い発想でいらっしゃる。
……元気そうでよかった。
「母さん、今日はあいつチカの家って」
「エ」
……聞いてませんけど?
「あら、そうだったのね」
「んで、今日こいつ泊まってくから」
聞いてませんケド?? そんな気はしたけど。
「夕ご飯は?」
「まだよ。みんなで食べましょうっ」
とんとん拍子に話が進んでいっている中、わたしだけが取り残されていた。ビックリしすぎて最早冷静だ。
「……まあ折角だ。ゆっくりしていきなさい」
トウセイさん、いろいろ気遣ってくださりありがとうございます。



