改めて読んでいて、また気になった箇所がいろいろ出てきたんだ。
それを、“普通に読んだだけじゃ見えない”ようにしたのは何故なのか。まだ、この時は知られてはいけないことだったから、わざと隠したのか。それとも、お得意のお茶目技なのか。
聞くことが絶えない。知りたいと思うことが、次から次へと溢れてくるんだ。
物語がここで終わっちゃってるから、知らないだろうけど。この後の日常だって、それはもう有り得ないくらいすごかったんだから。
「……何日振りだろう……」
今まで書いた日記や、仕事が忙しくて毎日書けなくなったそれから。今オレは、補足や続きの物語を起こしている。強制されたわけではなく、オレがそうしたかっただけ。
だって、あの人の物語は、あんなところで終わらない。あれはただの、スタートラインに過ぎなかったんだから。
「……あ。おはようしーくん!」
何日か振りに会ったその人は、今日も元気いっぱいで。起きてきたオレを、嬉しそうに抱き締めてくれた。
「おはよう母さん。あと、おかえり。帰ってきてたんだね」
世の中には、後世に名を残すような人々がたくさんいるだろう。けれどオレは、この人以上に偉大な人を知らないし、この人を越えるような人は、きっともうこの世には現れないと。そう思ってる。
「うん。ついさっきね?」
「そうなんだ。大変だったね」
「んーまあ、そこそこね。完徹しちゃったし、朝ご飯食べたら寝ちゃおうかなーなんて思ってるんだけど、しーくんも一緒に寝る?」
「いや、それは多分無理かな」
というか、服装見て何も思わないのが、やっぱり流石だよね。
「……? 今日何かあるの? さっきちーちゃんから、徹夜してたみたいだって聞いたけど……」
「母さん、今日何の日か知ってる?」
「……はて。今日は何か特別な日だったかな?」
「………………」
「……あ! わかった! 家族サービスの日でしょ! 正解?」
「違う」
これ、見てよと。
真新しい制服を母に見せつけるけれど、じっと見たはずの母は、何故か難しい顔をして眉を顰めた。
「気が早いのね、しーくん」
「なんでそうなる」
「はしゃぐ気持ちもわかるけど、入学式は来週だよ?」
「………………」
「着たくなっちゃう気持ちもわかるけどね! わたしも学生の頃、入学式前に何回もらった制服着たことか」
「そ、そうなんだ……」
振り返ったそこに残っていたのは、少し残った朝食と妹の残像だけだった。
久し振りに帰ってきた母さんに、変な勘違いされたじゃん。……後で覚えとけよ千晴。



