すべての花へそして君へ③


 ヒナタくんも実は、子育てに関していえばなかなかのポンコツなのです。


『いいから。後はオレがやっとくから、あおいはゆっくり休んでて』


 まだお腹の中に赤ちゃんがいた頃は、そんなふうにいつも甲斐甲斐しくわたしの身の回りの世話から家事のほとんどまでしてくれていた。
 けれど、生まれてきた赤ん坊が二人だったからかどうなのか。ヒナタくんが今まで培ってきた育児の許容範囲を、大幅に超えてしまっていたらしく……。


『……』

『こらこらヒナタくん。我が子に人見知りしないの』


 生まれてすぐは、どうしたらいいのかわからずものすごい遠目で見守ってたし。


『ちょ、……なんで泣いてんの! 理由言ってくれなきゃわかんないんだけど!』

『そんなこと赤ちゃんに求めないの。泣くのが仕事なんだから』


 慣れたかと思ったら、今度は代わり番こで泣き始める我が子に無理難題言い始めるし。


『世の中のお父さんの、立場の狭さが今ものすごくよくわかる……』

『早いから。それ知るの普通もうちょっと後だから』


 手に持ったおもちゃでお誘いをかけても、泣いて母親に縋る我が子に、本気で落ち込んだりするし。


「あっちゃんも、旦那に苦労してるんだねえ」

「いやいや、決してそんなことは」


 確かに、子育てに関していえばポンコツかもしれないけど。わたしが手の回らない家事なんかは、いつも率先してやってくれてるのはよく知ってるし。


「頼りないって言うよりも、なんかちょっと可愛くて」


 毎日お腹を撫でるのを日課にしていた頃。大きくなってきたら、お腹に耳を当てて、『今動いたかも……!』なんて嬉しそうに笑ってたり。忘れてた時に『今日はしないの?』って聞いたら、お布団の中で撫でながらそのまま眠っちゃったり。


『あおいに似てたらいいな』

『どうして?』

『オレに似ると育てるの大変そうだから』

『ふふっ。そんなことないよ』

『あるよ。だってあおい単純だもん』

『ヒナタくんもなかなか単純だったりするよ?』


 いつも、どんな子が生まれてくるんだろうと楽しげに話をしたり。極めつけは。


『……あはっ。お疲れ様、パパ』


 寝かし疲れたのだろう、子どもと一緒になって寝てるのが、それはもう涎が出るほど可愛かったのですよ。
 ……けどまあ、ここだけの話その後……。


『うわっ! ひ、ヒナタくん起きて……』

『構って』

『えっ』

『子守頑張ったご褒美ください』


 寝ていたうちの三分の一くらいは狸寝入りで。今度はわたしが、パパのお相手をすることが大半だったのだけど。