すべての花へそして君へ③


 積み上がった不安の欠片は、崩れるどころかさっさと一掃された。


「いや、何パターンか考えたんだよ。帰りに薬局まで行って、一緒にレジ並ぶか」

「う、うん」

「でも、それだとまさしくでしょ? オレはいいけど、あおいが思われるのは嫌だなって思って」

「そ、そんなことは……」

「いや、違うな。ちょっと恥ずかしげにこれを買おうとするあおいを、オレが店員に見られたくなかった」

「え? い、いやいや……」

「じゃあしれっと真顔で買えるの? あんたが?」

「か、買えるよそれくらい!」


 じと目で見られ、「絶対動揺するに一票」とか言ってくるんですけど。そもそもいろんな発言がおかしくなってることに、この人はお気付きなのだろうか。


「まあ、そんなこんなで。一番安全な方法は、一旦あおいを送り届けてから、オレが一人で買いに行くという戦法に落ち着いたのだけど」

「何と戦うの何と……」

「強いて言うなら、あおいとかな」

「……わたしと?」


 どういうことだろうかと。首を傾げたわたしに少し困ったように笑いかけながら、彼は優しく髪を梳いていく。
 一度触れるだけのキスをしてから、彼は少し申し訳なさそうに笑った。


「少し、オレの話を聞いてくれる?」


 二人分のコーヒーを用意して、テーブルに向かい合う形で座ると、ヒナタくんが静かに頭を下げた。何となくその行動の意図を察して、慌てて顔を上げてと懇願する。


「ううん。これは、ちゃんとけじめつけとかないといけないことだから」

「それはそうだけど、こればかりは授かり物だし。別にヒナタくんだけが悪いわけじゃ」

「わかってる。でも、オレがもうちょっとちゃんとしてたら、こうはならなかった」

「……嬉しく、ないの……?」