すべての花へそして君へ③


 その後、「何イチャイチャしてんの。ふざけんな」と、レンくんはヒナタくんに連行されていった。向こうの席で、ものすごい絡まれてるけど……ま、じゃれてると思って放っておこう。


「あれ? そういえばアキラくん、シントは?」

「ん? 今日は来ない」


 え。そうなの? わたしとしては、大学四年間ヒナタくんと同級生してたわけだし、いろいろ聞きたいことが山ほどあったんだけど。


「今日は生徒会の集まりだからって」

「変なところで律儀か」

「俺もそう言った。けど今日は、前から予定が入ってたらしいから」

「……そっか」


 ふっと柔らかくなるアキラくんの雰囲気に、シントの入っていたという予定を、何となく察した。
 アキラくんも、今はどんな感じなのかなって聞こうかなと思ったけど。聞かなくても幸せそうな空気に、野暮な口はそっと閉じた。


「だから、代わりに俺がシン兄の大学四年間の歩みを語ろうと思う」

「よ! 待ってました!」

「語ろうと思うが、あんまり語るほどのこともなく」

「……え」

「入学初日から卒業する最後まで、朝から晩まで日向のパシリに遭ってたらしい」

「……」


 今度会った時は、【よく頑張りましたで賞】の賞状を作って渡そうと思う。

 現在、クリーンになった皇の企業成績は常に右肩上がり。一に朝日向、二に海棠。その次に食い込んでくるくらいにはかなりの追い上げを成し、そして結果を残していた。油断をしていたら、足下を掬われそうな勢いだ。


「葵は、今新しい仕事を任されてるんだったか」

「うん。まあ一部社員の趣味で発足した分、ほとんど独立してるようなものでね。売り上げなんか朝日向の数パーセントにも貢献してないんだけど」

「大変だな。でもまあ、いろいろ順調そうで安心した」

「アキラくんも。あまりにも順調すぎて、うちのお父さんなんか毎日冷や汗掻いてるよ」


 流石にそれは言いすぎだろう。
 少し照れたように甘いカクテルを呷るアキラくんに、ついついクスッと笑ってしまった。


「葵。あんまいちゃついてっと、またヒナタが嫉妬すんぞ」

「いやいやツバサくん。全然そんなんじゃないから」

「んじゃアキは?」

「ノーコメント」


 え、ちょっとアキラくん?
 急な真顔でその発言は、如何なものか。


「ま、日向が気付く前でよかったなアキ。俺に感謝しろよ」

「え? どういうこと?」