その後、「何イチャイチャしてんの。ふざけんな」と、レンくんはヒナタくんに連行されていった。向こうの席で、ものすごい絡まれてるけど……ま、じゃれてると思って放っておこう。
「あれ? そういえばアキラくん、シントは?」
「ん? 今日は来ない」
え。そうなの? わたしとしては、大学四年間ヒナタくんと同級生してたわけだし、いろいろ聞きたいことが山ほどあったんだけど。
「今日は生徒会の集まりだからって」
「変なところで律儀か」
「俺もそう言った。けど今日は、前から予定が入ってたらしいから」
「……そっか」
ふっと柔らかくなるアキラくんの雰囲気に、シントの入っていたという予定を、何となく察した。
アキラくんも、今はどんな感じなのかなって聞こうかなと思ったけど。聞かなくても幸せそうな空気に、野暮な口はそっと閉じた。
「だから、代わりに俺がシン兄の大学四年間の歩みを語ろうと思う」
「よ! 待ってました!」
「語ろうと思うが、あんまり語るほどのこともなく」
「……え」
「入学初日から卒業する最後まで、朝から晩まで日向のパシリに遭ってたらしい」
「……」
今度会った時は、【よく頑張りましたで賞】の賞状を作って渡そうと思う。
現在、クリーンになった皇の企業成績は常に右肩上がり。一に朝日向、二に海棠。その次に食い込んでくるくらいにはかなりの追い上げを成し、そして結果を残していた。油断をしていたら、足下を掬われそうな勢いだ。
「葵は、今新しい仕事を任されてるんだったか」
「うん。まあ一部社員の趣味で発足した分、ほとんど独立してるようなものでね。売り上げなんか朝日向の数パーセントにも貢献してないんだけど」
「大変だな。でもまあ、いろいろ順調そうで安心した」
「アキラくんも。あまりにも順調すぎて、うちのお父さんなんか毎日冷や汗掻いてるよ」
流石にそれは言いすぎだろう。
少し照れたように甘いカクテルを呷るアキラくんに、ついついクスッと笑ってしまった。
「葵。あんまいちゃついてっと、またヒナタが嫉妬すんぞ」
「いやいやツバサくん。全然そんなんじゃないから」
「んじゃアキは?」
「ノーコメント」
え、ちょっとアキラくん?
急な真顔でその発言は、如何なものか。
「ま、日向が気付く前でよかったなアキ。俺に感謝しろよ」
「え? どういうこと?」



