半ば食い気味でそう答えたのは、この恰好に触れないままにされるのが、どうしても恥ずかしかったからだ。
それもわかっているのか。目元をそっとやさしく細めた彼は、先程のぶっきらぼうな挨拶よりは愛しさが込められた「おはよう」を、再びくれた。
「もうちょっと寝ててもよかったのに。……つらくない?」
「そういうことは聞かないで」
本当は、立ってるのもやっとなくらいだけど。今はそれよりも先に聞きたいことがある。
けれどゆっくりと立ち上がった彼に、意を決して言葉を紡ごうとした唇は、何故か気付けば彼のそれに奪われていた。
流れるような口付けに、驚くまもなく。それは、僅かに触れただけであっけなく離れていった。
「……え?」
というか、キスしてきた方が何故か物凄い驚いている。
「……やばいな」
「な、なにが……?」
「……」
「ひ、ひなたくん……?」
ぼそぼそと、まるで自問自答しているような何かを呟きながら。返ってこない呼びかけに首を傾げているわたしの手を取って、代わりにそっと手を引く。
テーブル席へと座らされ、ちょっと待っててと言わんばかりにぽんぽん頭を撫でられた。
取り敢えずわかったのは、わたしの恰好もちょっとおかしいけど、ヒナタくんの言動も、朝だからかちょっとおかしいってこと。
目の前に置かれたコーヒーからは、湯気がもくもくと出ていた。ふつふつと、音まで聞こえる。
「……あの、ヒナタくん」
聞きたいことは山ほどあったけれど。明らかに様子がおかしい彼に、流石にどうしたのかと。声をかけずにはいられなかった。
「……いろいろ考えてたんだよ、これでも」
「……考えてたの?」
「え。全然考えてないように見える?」
「というよりは、心ここに在らずって感じかな」
さっきよりは落ち着いたコーヒーを指差して言うと、「ほんとだね」って、困ったように笑った。
「……聞いてもいい?」
「ん?」
「わたし、これで合ってる?」
「……ん?」
「やっぱり違う? こんな恰好、流石にもうおかしいよね」
「……いや」



