じゃあ、行きだけはちゃんと送っていくねと。お言葉に甘えて乗った彼の運転は、若葉マークが取れたばかりのまだまだ新米のはずだけど。難なくスイスイと乗り熟す様子を見て、やっぱり男の子だなあと。絶対この子、マ〇カ得意だわと。今度一緒にやろうねと約束した。
「遅くなるって何があるの」
「ああ。……お父さんに呼ばれてるの。多分新入社員も増えたし、これからの方針について少し話し合いたいんだと思う」
「……そっか。大変だね社長代理も。今日乙女座最下位だしね。“油断大敵”だっけ」
「……本当、朝から油断大敵だったわ」
「何か言った?」
「いえいえ何も! ヒナタくんも、これからバイトの比じゃなくなると思うから、覚悟しといてね?」
端からそのつもりだから大丈夫。
信号待ちにぽんっと頭を撫でてくれる彼に、思わず笑みがこぼれた。
「そんな顔してると、ここで襲うよ」
「さっきもうしたじゃない」
「またしたくなった」
「就職祝いまでお待ちください」
それは楽しみと、笑い合ったわたしたちだったけれど……。
『――大変だね』
ヒナタくんに言われた時は、全然そんなこと思わなかったのに。
まさか今日、お父さんにあんなこと言われるなんてわたし、……思ってもみなかったよ。



