すべての花へそして君へ③


 じゃあ、行きだけはちゃんと送っていくねと。お言葉に甘えて乗った彼の運転は、若葉マークが取れたばかりのまだまだ新米のはずだけど。難なくスイスイと乗り熟す様子を見て、やっぱり男の子だなあと。絶対この子、マ〇カ得意だわと。今度一緒にやろうねと約束した。


「遅くなるって何があるの」

「ああ。……お父さんに呼ばれてるの。多分新入社員も増えたし、これからの方針について少し話し合いたいんだと思う」

「……そっか。大変だね社長代理も。今日乙女座最下位だしね。“油断大敵”だっけ」

「……本当、朝から油断大敵だったわ」

「何か言った?」

「いえいえ何も! ヒナタくんも、これからバイトの比じゃなくなると思うから、覚悟しといてね?」


 端からそのつもりだから大丈夫。
 信号待ちにぽんっと頭を撫でてくれる彼に、思わず笑みがこぼれた。


「そんな顔してると、ここで襲うよ」

「さっきもうしたじゃない」

「またしたくなった」

「就職祝いまでお待ちください」


 それは楽しみと、笑い合ったわたしたちだったけれど……。

『――大変だね』

 ヒナタくんに言われた時は、全然そんなこと思わなかったのに。



 まさか今日、お父さんにあんなこと言われるなんてわたし、……思ってもみなかったよ。