季節は巡り巡って。
五年目。春爛漫。
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「ヒナタくん。ハンカチ持った?」
「またベタな質問。……てかもうこれ一回やったから」
「じゃあティッシュは?」
「……いる?」
「一応持って行こう」
「ん。そうする」
空は晴天。気温も良好。今日の占い、魚座は一位だったし。
……うんっ。大学の入学式に引き続き、絶対いいことあるよこれ!
「あ、ヒナタくんちょっと待って?」
不思議そうに振り返るヒナタくんの首元に一度視線をやってから、そっと見上げる。
「……まだ時間大丈夫?」
「そうだね。だいぶ余裕かも」
「だったらさ、ちょっとやってみてもいい?」
「……もしかしてやってみたかった?」
つんと、それを突いたヒナタくん。少し照れくさかったけれど、迷わずにうんと一度頷いた。
「せっかく、綺麗でばっちりのところを申し訳ない」
「いや、別に問題ないよ」
シュルシュルとそれをほどいたヒナタくんは、すっとやさしく目を細めた。
「はい」と。手の平に乗せてくれたのは、わたしが大学の入学祝いにあげたネクタイ。それを、大事に使ってくれていたのもすごく嬉しいし、この特別な日につけてくれたのもすごく嬉しい。
「今日はね、こっちとかつけていったらどうかなって」
それを大事に畳んでから、新しく箱からそれを取り出す。
「……もしかして就職祝い?」
「それは今日帰ってから盛大に。これは、わたしがただヒナタくんにつけたいという願望の表れである」
「ついでに、タイピンもセットだぞ!」と、嬉しげに見せびらかすと、彼は少し困ったように笑った。
「大事なのが二つもあったら悩むね。いざという日は、迷わずつけてたのに」
「またその日が来た時は、新しいの選んであげるよ!」
「じゃあそうさせてもらおう。クローゼット、ネクタイだらけになりそうだけど」と、嬉しそうに笑って、わたしがやりやすいように少し体を屈めてくれた。



