すべての花へそして君へ③


 まあその後は、推測するに。埋もれてクンクン匂い嗅いで幸せ感じてるところに、寝坊したオレが起きてきて。出迎えようと思ってリビングから出たら、不可抗力で頭にパンツが被さっていたと。そんな感じか。


「だから、本当にパンツ被りたくて被ったわけじゃないもん。わたしだって、被ってるの知ってちょっと恥ずかしかったもん……」

「ごめんごめん。朝から超楽しかったよ、ありがとう」

「楽しませたくてやったわけじゃないのに……」

「でも、どうせ嗅ぐなら目の前の本人にしなよ」


「……! うんっ!!」と、大喜びで抱き付いてきた彼女は、たいそう嬉しいらしく尻尾をぶんぶん振っている。


「あと、誘うならもうちょっと色っぽいのよろしく」

「え?」

「ま、しょうがないからパンツ被っててもいいよ」

「もう被んないから!」


 よしよしと宥めるように頭を撫でていると、本当に小さな声で「が、がんばる……ね」と。服を、つんと指で引っ張られた。


「上出来」

「うわっと!」

「ま、こんな記念日もあっていいよね」

「えっと、ヒナタ……くん?」


 今日みんなと話した結婚観だけど。
 多分オレは、こいつと結婚する。

 確証があるわけじゃないけど、こいつ以外とは結婚しないから。

 結婚したら……。
 家はどんなのがいいとか。庭はどんな花壇にするかとか。子どもは何人欲しいだとか。
 そんなことを考えるのも楽しいけど、それももうしなくていいかなって。オレは思った。


「抱いていい?」

「……っえ? ま、まだお昼過ぎ」

「誘ったのは、あんただよ」

「え!? い、いつっ、んんっ」


 オレにとって。こいつと一緒にいる時以上に、楽しいことなんてないから。
 だから結婚しても、きっと何をしてても楽しいし。幸せだと、そう思うから。