いい具合に釣れたので、これはこれでよしとしよう。
「みんなの結婚観について話をしてました」
「結婚観?」
「いやいやいや……」
「ヒナくん、さっきのはスルーするんだね……」
「(葵が何故そんなことしたのかが今一番気になるんだが……)」
「だって、カナとアキくん。二人は彼女持ちでしょ? そういう話してもいいかなって思って」
「……え?」
「え?」
「……」
「え。ちょっとアキ。それ俺聞いてないよ!」
「あ、シントさんは用事ないんで、もう一回パシリお願いしてもいいですか」
「どういうこと!?」
「この間、シャー芯切らしたんです。それと三色ボールペンにルーズリーフと、あとA4のレポート用紙。それから大学ノート五冊綴りのやつと、糊とホチキスの芯と付箋。お願いします」
「意外と多いな!?」
「あ。糊はスティックで」
「わかってるよ!!」
なんだかんだで、言うこと聞いてくれるんだもんなシントさん。ま、いろいろ弱みに付け込んでる節は否めないけど。
先程の独り言については、それ以上を言う気がないと悟ったのか、聞いては来なかった。視線で『めっちゃ気になる』とは言われたけど。
「にしても……アキ。お前いつの間に彼女なんて作ったんだよ」
「……少し前?」
「彼女はどんな子?」
「……強いて言うなら家庭的?」
「へえ。……学科は?」
「管理栄養学科」
え。何それ。将来の健康診断すごい安心なんですけど。
二人の顔には、そんなふうに思ったことが書いてあった。しょうがない、オレも知った時はそう思った。
その後、お互いの彼女のことについて話をした。普段どんなことを喋ったり、どんなデートをしたりするのか。結構いい参考になった。
「……結婚、かあ」
「……」
「トーマは?」
「ん?」
「もし彼女がいたとして。結婚って考えたことある?」
「……俺は……」



