すべての花へそして君へ③


 いい具合に釣れたので、これはこれでよしとしよう。


「みんなの結婚観について話をしてました」

「結婚観?」

「いやいやいや……」

「ヒナくん、さっきのはスルーするんだね……」

「(葵が何故そんなことしたのかが今一番気になるんだが……)」

「だって、カナとアキくん。二人は彼女持ちでしょ? そういう話してもいいかなって思って」

「……え?」

「え?」

「……」

「え。ちょっとアキ。それ俺聞いてないよ!」

「あ、シントさんは用事ないんで、もう一回パシリお願いしてもいいですか」

「どういうこと!?」

「この間、シャー芯切らしたんです。それと三色ボールペンにルーズリーフと、あとA4のレポート用紙。それから大学ノート五冊綴りのやつと、糊とホチキスの芯と付箋。お願いします」

「意外と多いな!?」

「あ。糊はスティックで」

「わかってるよ!!」


 なんだかんだで、言うこと聞いてくれるんだもんなシントさん。ま、いろいろ弱みに付け込んでる節は否めないけど。
 先程の独り言については、それ以上を言う気がないと悟ったのか、聞いては来なかった。視線で『めっちゃ気になる』とは言われたけど。


「にしても……アキ。お前いつの間に彼女なんて作ったんだよ」

「……少し前?」

「彼女はどんな子?」

「……強いて言うなら家庭的?」

「へえ。……学科は?」

「管理栄養学科」


 え。何それ。将来の健康診断すごい安心なんですけど。
 二人の顔には、そんなふうに思ったことが書いてあった。しょうがない、オレも知った時はそう思った。

 その後、お互いの彼女のことについて話をした。普段どんなことを喋ったり、どんなデートをしたりするのか。結構いい参考になった。


「……結婚、かあ」

「……」

「トーマは?」

「ん?」

「もし彼女がいたとして。結婚って考えたことある?」

「……俺は……」