すべての花へそして君へ③


 再び5月11日。
 四回目の、記念日。


 ✿


「……え。あの集団ヤバくない?」

「あ。あれ、現桜大生徒会とそのOBじゃん」

「イケメンが、真剣な顔して何話してるのかな……」

「次元が違いすぎてわっかんないわ……」


 そんな周りの会話がざわざわと聞こえるここは、桜ヶ丘大学のカフェテリア。ガラス戸で区切られた一室を貸し切り、存分に目立っていた彼らが話している内容とは。


「この際だから、聞いてみようと思って」

「……何をだよ」

「みんなの結婚観」

「……」


 え。なんでみんなそこで、揃って口噤むの。確かに、唐突だったかもしれないけど、いいじゃん別に。男子がそんなトークしたってさ。


「緊急事態っつうから、バイトのシフト変更してもらったんだぞシズルさんに」

「本当はその変わられた人もお願いしてたんだけどね。まんまと逃げられたか」

「けど、本当。いきなりどうしたのヒナくん。もうアオイちゃんと結婚でもするの?」

「いや、まだ流石に」

「じゃあ、なんで言い出したんだ? きっかけがないと、そんなこと話題に出ることもないだろう」

「……ま、アキくんはそう言うよね」


 きっかけ……きっかけ、ね。
 コーヒーにミルクを落とし、くるくるとスプーンで回す。勢いをつけて回っていたそれが、緩やかになった時。頬杖をついた。


「……なんであいつ、オレのパンツ頭からかぶってたんだろ……」

「ちょっと日向くん! 焼きそばパンなんて売ってなかったんだけど! 大学出てコンビニまで走ったじゃん!」

「あ、そうだったんですね。すみません。パシリの定番なんであるものとばかり」

「……ちょっと待て日向」

「ん?」

「今、なんかおかしいことが聞こえたような。俺の耳がおかしいのかな……」

「……? ユズに耳掃除してもらえば?」

「何の話?」

「シン兄は黙って」

「なんで!?」