確かに、この家を譲り受ける時言っていた。
二十歳までは父名義。あと約一年もないけど、この家はまだオレのものじゃない。
「学生のうちは学業に専念しろ、か。父さんの言いそうなことだ」
「でもね、ダメとは言ってなかったんだよね?」
「……? 何を」
「一緒の部屋を“作る”ことは」
「……いや、それってさ」
「何を言っているんだいヒナタくん。揚げ足は取れるだけ取るもんだよ」
にひっと勝ち誇ったような笑みを浮かべる彼女もまた、オレと同じことを考えてはいたらしい。というか、オレよりタチ悪くない?
「だから、わたしたちの部屋。一緒に作っていこ? ね?」
「……そうだね。そういうのも、いいかもね」
「うんっ。絶対楽しくなるよ!」
「てことは、これからはお互いの部屋のベッドで寝るわけだ」
「……ん?」
「じゃあ取り敢えず、今夜はあおいの部屋に行こうかな」
「えっ。いやあ、わたしお引っ越ししてきたばかりだからさ? まだちょっと荷解きが……」
「大丈夫だよ。いつぞやのバレンタインは、オレの部屋ぐちゃぐちゃのままだったし」
「……! そ、そんなことも、あったような……?」
「ね。いいでしょ?」
「……え、っと」
「だめ?」
「……んと。その……」
「サプライズのお礼。……させて」
オレのカラダで。
そんなふうに耳元で囁けば、彼女が真っ赤になることは予想済み。……だったけど。
「……あ、あの……」
「何?」
「下着を、選ぶ時間はもらえますか……?」
「……は?」
「かっ、可愛いの。今日付けてない、から……」
「……」
……ねえ、あおい。確かに、その研究結果として出ている数字は、的を射ているんだろうと思う。けどさ、もしかしたらオレらには不要なものかもしれないよ。
だって、三年が経った今でも。あおいもオレも、こんなにもお互いにドキドキさせられて、いちいち胸が苦しくなるほど愛おしいんだから。
「……待った分だけ、ご褒美くれるなら」
「えっ! ……あ、あの。えっと……」
真っ赤な顔の可愛い彼女が、葛藤の末結局勝てないと折れて首を縦に振るのは、そう囁いてから3秒と経ってなかっただろう。



