わたしは、小さく嘆息を洩らした。


「……じゃあ、他の子はどう? ひなたくんとか」

「とってもいい人選だと思います! 個人的にはアイくんもオススメします!」


 それからは他のみんなの話で盛り上がったが、やっぱり彼女も、訊かずにはいられなかったのだろう。


「……あおいちゃん? あかねやおうりくんから聞いたの」


 ――今、一体わたしが何をしているのか。


「んーじゃあ、逆に何してると思います?」

「え? ……そうね」


 仕事上立場上、決して内容を外部に漏らすことはできない。誰かに、言えたらいいのに言えない。それなのに、みんなには心配ばかりさせる。
 そんな状況に、まるで昔の自分のようだと心の中で自嘲した。


「……じゃあ、刑事さんみたいに犯人を調査したり?」

「ふむふむ」

「追いかけちゃったり」

「ほうほう」

「やっつけちゃったり!」

「おおー!」

「あらやだ、当たっちゃった?」

「じゃあそういうことにしておきますか」

「えー。ずるいわあおいちゃん」

「まあまあ、今日は美味しいお茶とケーキを楽しみましょうよ」


 狡い。きっと、そんな簡単な言葉では片付けられないだろうな。
 ……何度繰り返したか。何度苦しんだか。そうやって責めて貶したところで、結局は自分に返ってきただろうに。


(これは、わたし自身が決めたことだ)


 何度、自分に腹を立てようとも。何度、寂しさに泣きそうになろうとも。
 そんなの自業自得だ。資格すらない。


(それでも、決めたんだ――)


 たとえそれで、彼を苦しめることになっても。


 ――――――…………
 ――――……


 夕方5時。場所は、前の喫茶店で。
 しかし、店内を見渡したが待ち人の姿は見当たらない。わたしは、前と同じ席に腰掛けた。


「んー……じゃあ、ミックスを一つ。あと連れにはブレンドを。来たら一緒にお願いします」


 どうやらわたしの方が早く着いたようだ。
 お冷やに口をつけながらふと窓の外を見ると、まだ早い時間にもかかわらずもう随分と太陽が沈みかけている。……もう、冬が来てしまったのか。


(……っと、そうだ。チカくんからの連絡を確認しておかないと)


 正確に言えば、中継役をしてくれている理事長から、だけど。