「……ねえ」と、今度は三人の冷ややかな目が、あおいへ一直線に注がれる。彼女はというと、物凄く居心地が悪そうだった。
「そりゃお前、出て行きたくもなるわ」
「だ、だから。わたしはそんなつもりは微塵も……」
「なくても、受け取り方は相手次第だよ、あおいチャン」
「うっ、……そう、だけど。でも」
「三年目の記念日に、別れるカップルが多いって話聞かされるとか。……ひーくんかわいそう」
「……めんぼくない」
珍しく、どうやらみんなオレの味方らしい。
それは、ちょっと嬉しいんだけど。でも、どうしてそんな話をしたの。はい、あおいさんどうぞ。
「……その研究発表した人は、それとは別に発表をしたの」
「……別って?」
「ドキドキとか。まあいわゆる胸きゅんとか。そういうお互いが嬉しいイベントとかサプライズを、三年ごとにした恋人たちの別れる確率はどうなったのかって発表」
「……どう、なったの」
そう聞くオレに、彼女は少し恥ずかしがりながら、寄り添うように隣に座った。
「毎年素敵な記念日をありがとう、ヒナタくん。お花もプレゼントも、今年は無しにして一緒に過ごして欲しいって言ったのは、わたしからのサプライズを受け取って欲しかったからなの」
もう、言わなくてもわかるでしょう?
照れたように微笑む彼女の頬は、ほんのり色付いていた。
「……そういうこと」
「あ! その研究結果の結論になるんだけど、結局のところ三年も一緒にいたらドキドキすることって少なくなるからなんだって。いわゆるマンネリ? だから、そうしてたら段々脳が正常に戻っていっちゃうから、結果的に別れちゃうって発表で」
「おかえり」
「……え。今、ひなたくん……」
「案外早かったけど、でも。やっぱり待ちくたびれた」
「……うん。お待たせしました。……あの」
「ん?」
「……ただいま。ヒナタくんっ」
「……うん。おかえり」
「えへへ」
そんな様子のオレたちに、三人は温かい目を向ける。
「もうちょっと、言いたいこと言ってもいいと思うぞオレは」
「おれもおれも! 本当なら怒るところだよこれー」
「ひーくんも、簡単に納得しちゃう辺りやさしいんだから」
彼らの言うとおり、今回ばかりは本気で肝が冷えたけど。……仕方ない。今更あおいに、直球教え込んだところで、飛んでくるのはいつも180キロ並みのストレートだ。
いいんだよ。あおいはあおいのままで。そんなあおいに、オレはベタ惚れしてんだから。



