一年目は花束を。二年目はプレゼントを。
けれど、三年目が近くなった時、こう言われた。
『あのね、ヒナタくん。よかったらその日は一緒にいてくれない? ……プレゼント? もらって嬉しいものばかりだよ。ヒナタくんもそうだったら嬉しいけど、次は一緒に過ごせたら、それだけで十分嬉しいから』
「惚気か」
「「惚気ですね」」
「だから、言われたとおりそうしてただけじゃん。何がいけなかったの」
「そもそも、今一緒にはいないけどな」
「ちょっと」
「もしかしたら、それは“フリ”なのでは……」
「え?」
「ほら、よくあるじゃないですか。押すなよ押すなよってフッておいてから、熱湯にじゃっぱーんって」
「あいつに限っては、そういうことしないと思うんだけど」
「じゃあやっぱり、本気で愛想が尽きてきたから、これを最後に」
「させねえから絶対」
「そ、そんなに怒んないでよ。冗談。冗談だからさ」
「……冗談も、あんまり言わないで」
「え?」
「……自分でも、考えないようにしてるんだけど。それだと、結構本気でヘコむから」
しんと静まりかえってしまう中、オレは不安になって視線を落とした。
「……何かしたのか」
「え?」
「あおいさんに嫌われるようなこと。した覚えはないんだろう?」
「……うん。してない」
「自信持って言えるなら大丈夫だろ。もう一度彼女の話をちゃんと聞いてこい」
「……ちゃんと?」
「あのあおいさんだからな。愛の告白や通常会話ならまだしも、突発的思い付きへの配球、直球ストレートに関しては一球もないぞ。150キロの変化球か、160キロのフォークだ」
「……た、確かに」
「だから、もう一度聞いてみて、本当にフラれたらまた頑張れ。その時はいくらだって相談にでも乗ってやるし、慰めの言葉だってかけてやるから」
「レン……」
「九条くん。頑張って」
「彼女とまともな会話ができる方が少ないですから。望みは、まだ十分ありますよ」
「アイもカオルも。……朝早くに呼び出してごめん。ありがとう」
オレは、本当にいい友人に恵まれた。



