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家の明かりが点いていると、それだけで少し、心が躍る。かすかに外まで漂ってくるこの美味しそうな香りは……あーなんだっけ。すごい気になる。
「ただいまー」
と、玄関を開ければ、いつも襲ってくる衝撃。それを身構えていたけれど、今日は飛びついては来なかった。
もしかしたら、料理中で手が離せなかったとかかな。そう思って耳を澄ませてみるけれど、一向に返事はない。キッチンに行っても彼女の姿はなく、どうやらただ単に声が聞こえなかったらしい。
じゃあ、どこにいるんだろうか。かくれんぼの鬼になった気分で、彼女がどこにいるのかを探す前に思い出したことがある。
「……オレの部屋?」
確かに、電気は点いていたけど、何してるんだろう。
不思議に思いながら、オレは「あおいー? いるー?」と声を掛けながら、自分の部屋の扉をゆっくりと開けた。
そこで、事件は起こった。
「……あ。おかえり、ヒナタくん」
バサバサバサッと、オレの指から鞄が落ちて、中身がぶちまけられた。けど、それを拾えないくらい激しい動揺が今、オレを襲っていた。
「……あ、あおい」
「ねえ、ヒナタくん」
「いや、あの。これは……ちがくて」
「何これ」
「いやだから、それには理由と言いますか……」
「……」
「……あおいも知ってると思うけど、ちゃんとわけがあって」
「まさか、とは思うんだけど」
ごきゅっ。
緊張で、喉が変な音を出した。
「……これって、ヒナタくんの趣味なの」
「……え?」
「写真とか。夜な夜な見たり」
「…………」
「動画とか。……夜な夜な見たり」
「…………」
「終いには! 録音データをスマホに入れて夜な夜な……ううん。日中どこでも聞いてるとか!」
「んなわけあるか!」
家の明かりが点いていると、それだけで少し、心が躍る。かすかに外まで漂ってくるこの美味しそうな香りは……あーなんだっけ。すごい気になる。
「ただいまー」
と、玄関を開ければ、いつも襲ってくる衝撃。それを身構えていたけれど、今日は飛びついては来なかった。
もしかしたら、料理中で手が離せなかったとかかな。そう思って耳を澄ませてみるけれど、一向に返事はない。キッチンに行っても彼女の姿はなく、どうやらただ単に声が聞こえなかったらしい。
じゃあ、どこにいるんだろうか。かくれんぼの鬼になった気分で、彼女がどこにいるのかを探す前に思い出したことがある。
「……オレの部屋?」
確かに、電気は点いていたけど、何してるんだろう。
不思議に思いながら、オレは「あおいー? いるー?」と声を掛けながら、自分の部屋の扉をゆっくりと開けた。
そこで、事件は起こった。
「……あ。おかえり、ヒナタくん」
バサバサバサッと、オレの指から鞄が落ちて、中身がぶちまけられた。けど、それを拾えないくらい激しい動揺が今、オレを襲っていた。
「……あ、あおい」
「ねえ、ヒナタくん」
「いや、あの。これは……ちがくて」
「何これ」
「いやだから、それには理由と言いますか……」
「……」
「……あおいも知ってると思うけど、ちゃんとわけがあって」
「まさか、とは思うんだけど」
ごきゅっ。
緊張で、喉が変な音を出した。
「……これって、ヒナタくんの趣味なの」
「……え?」
「写真とか。夜な夜な見たり」
「…………」
「動画とか。……夜な夜な見たり」
「…………」
「終いには! 録音データをスマホに入れて夜な夜な……ううん。日中どこでも聞いてるとか!」
「んなわけあるか!」



