すべての花へそして君へ③

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 家の明かりが点いていると、それだけで少し、心が躍る。かすかに外まで漂ってくるこの美味しそうな香りは……あーなんだっけ。すごい気になる。


「ただいまー」


 と、玄関を開ければ、いつも襲ってくる衝撃。それを身構えていたけれど、今日は飛びついては来なかった。
 もしかしたら、料理中で手が離せなかったとかかな。そう思って耳を澄ませてみるけれど、一向に返事はない。キッチンに行っても彼女の姿はなく、どうやらただ単に声が聞こえなかったらしい。
 じゃあ、どこにいるんだろうか。かくれんぼの鬼になった気分で、彼女がどこにいるのかを探す前に思い出したことがある。


「……オレの部屋?」


 確かに、電気は点いていたけど、何してるんだろう。
 不思議に思いながら、オレは「あおいー? いるー?」と声を掛けながら、自分の部屋の扉をゆっくりと開けた。


 そこで、事件は起こった。


「……あ。おかえり、ヒナタくん」


 バサバサバサッと、オレの指から鞄が落ちて、中身がぶちまけられた。けど、それを拾えないくらい激しい動揺が今、オレを襲っていた。


「……あ、あおい」

「ねえ、ヒナタくん」

「いや、あの。これは……ちがくて」

「何これ」

「いやだから、それには理由と言いますか……」

「……」

「……あおいも知ってると思うけど、ちゃんとわけがあって」

「まさか、とは思うんだけど」


 ごきゅっ。
 緊張で、喉が変な音を出した。


「……これって、ヒナタくんの趣味なの」

「……え?」

「写真とか。夜な夜な見たり」

「…………」

「動画とか。……夜な夜な見たり」

「…………」

「終いには! 録音データをスマホに入れて夜な夜な……ううん。日中どこでも聞いてるとか!」

「んなわけあるか!」