すべての花へそして君へ③

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 一年前。わたしが高校を卒業して数日後に、その事実は告げられた。


『……え?』


 年末辺りから少しずつ体調を崩していた母の容態は、日にちを増すごとに酷くなっていた。日に日に増す倦怠感。貧血気味で、酷い時は立っているのもやっと。少し熱っぽい日もあった。それから、食欲もあまりなくて、あまり食べてすらいないのに気分が悪くなって何度か吐くことも。
 つらそうにしていた母に、何もしてあげられない日が続いてずっと悔しい思いをしていた。

 断固として病院に行きたがらなかった母を連れ出し、ようやくはっきりとわかった病名。それは――。


『……できちゃった、みたい』

『妊娠、してるの……?』


 うん――と、それはそれは嬉しそうに頬を緩める母に、わたしも涙が込み上げそうになる。


『体調、悪い原因がわかって……よかったけど』

『心配かけてごめんね?』

『ううん。……おめでとう、お母さん』

『あおいもね?』

『え……?』

『あおいに、……妹ができるわよ』


 え? もしかして、もう性別がはっきりわかるくらい大きい……わけないか。だったらもう少しおなかも出ているはず。


『わかるのよ』

『……そうなの?』

『ええ。なんとなく』

『……そっか』


 愛おしげにおなかをさする母の手に、そっとわたしの手も重ねる。


『……お姉ちゃん、ちゃんとできるかな』

『大丈夫よ。自慢の娘ですもの』

『……うんっ! 一緒に子育て頑張ろうね!』

『ふふっ。……ありがとう、頼もしいわ』