まあ、こんなところで立ち話もなんだからと。再び歩き出したアキくんやシントさんに、そんな失態を犯してしまった後の処理について、諸々聞かされた。
「……ま。まさかの皇も高卒認定不合格になるとは思ってもみなかったんでしょうね」
「うん。だからまあ、スタート地点に立つことすらできなかったわけだし、もうこのまま次期当主の座は降ろされるとばかり思ってたんだけど」
「……結局は、難癖付けつつ期待も大きいってことらしい」
「……みたいだね」
新たに皇が命じたのは、リトライすること。
その間は、犬馬の労を厭わないで仕事に励めと。
「……アキくん、止めたっていうのは?」
「同じ学部だって言うから」
「……」
「せめて科を変えられればよかったんだが、……どうしても同じのにすると聞かなくて」
「だから謝ったの?」
「ああ。日向には、これからたくさんの迷惑を掛けると思うが、存在消してくれて大丈夫だからな」
「ちょっと! やっぱり俺の扱い酷いよね!?」
ゴミを見るような目のアキくんに、一同大笑い。
入学式早々。容姿が整った奴らのテンションの高さに、周りからの視線も少しずつ集まっていく。
「大丈夫だよ、アキくん」
「……日向?」
「正直さ、オレ。寂しかったんだと思う」
「……」
「確かに、学年学部は違うけどみんながいる。でも、教室に行って知り合いがいないなんて、ほんといつ振りだって思ってて」
「……そうか」
けど、それがほとんど気にならないくらいには、この空間がオレにはもう、居心地がいいものになった。
「だから、大学行ってもつまんないんじゃないかなって。思っててごめん」
「謝るな。それは、ここにいるみんな思ってることだから」
「だから、これから楽しくなりそうで嬉しい」
「……日向」
「だから、取り敢えず一番最初にシントさんのことおもちゃにさせてもらうね。絶対退屈だからさ」
「ああ。好きにしてくれて構わない」
「ちょっと!? だから、本当に扱い酷いから! 泣くよ!?」
きっとここでも、今までみたいに楽しいことがたくさん待ってる。
そう思うと、この青い空がよりいっそう綺麗に見えた。
「……それはそうと、みんななんで入学式に登校? シントさんがいるからアキくんはわかるけど……」
「ああ。それなんだがな日向」
そう言うと、アキくんはまずトーマを指差した。
「副会長」
「お前も入ってきたし。ま、一年だけな」
「それと、カナは会計。柚子は書記」
「待ってたよーヒナくん」
「えへ。あたしも、あと一年しかいないけど」
「……まさかとは言わないよね」
「言う。俺が生徒会長」
――日向とシン兄には、もれなく生徒会に入ってもらう予定だから。
「いや、俺仕事……」
「ぶはっ。なにそれ、もう……」
うん。やっぱり楽しいことが起こりそうだ。



