物凄い言い当てられているけど、最後の人に関しては完全スルーを決め込んだ。
ていうかさ、なんでシントさんも新入生なの。そこんところ誰か説明して。
「全学部学科学年関係なく、卒業するまでの間何においても常にトップを取り続けること。それが、皇が俺に課した、次期当主への条件だったから」
先程まで楽しげだった空気が一変。シントさんから告げられた事実に、一同はしんと静まり返る。
「……いや違いますって。オレが聞きたいのは、“なんで一年遅らせたのか”ってこと」
「……え」
「アキくんから概ね事情は聞きましたし、ここにいる時点で納得もしました」
「……」
ま、他の三人は今初めて聞かされたんだろう。条件に、ただただ目を丸くしていたけれど。
「少し、思惑が上手くいかなくてね」
「……思惑、ですか?」
「そう。あれは忘れもしない高卒認定試験の日だ」
「深刻に話す必要はないし、熱心に聞く必要もない。要は、ただドジを踏んだだけの話だ」
アキくんの心無い言葉に、今度はオレが目を丸くする番だった。
「アキ! そんな言い方身も蓋もない……!」
「アキくん。ドジって……」
「受験票を忘れたとか」
「受験日を間違えたとか?」
「わかった! 緊張でおなかが痛くなっちゃったんだ!」
「……ちょっと待ってよ君たち。俺がそんなドジを踏むような人間に見えるのかい……?」
「見えてるから言うんだろ、みんな」
「な、なんでさっきからアキは、そんな死んだ魚みたいな目で俺を見てくるの……っ」
「……もしかしてシントさん、ボールペンしか持ってなかったんじゃないですか?」
言った言葉に、ぎくりと肩が一瞬上がる。
確か試験はマーク式だったはず。鉛筆シャーペンならまだしも、仕事柄常に商談等で使うのはボールペンや万年筆だけだったのだろう。
試験中ずっと、頭を抱えてるシントさんを想像すると、また噴き出してしまった。
「頭を下げて、誰かに借りればよかっただろ」
「そんなの皇の、俺のプライドが許されない」
「いや、それで試験不合格になったら元も子もないんじゃ……」
「男のプライドは、時には不必要なものですよ。シントさん」
「そんなどうでもいいプライドなんかゴミ箱にポイしてしまえい!」
「……だ、そうですけど」
「嗚呼耳が痛い……」



