……ねえ、ヒナタくん。
……ん?
この十年間、ずっとわたしの隣にいてくれてありがとう。
…………。
過去には、自分の存在を疎んでしまうこともあったんだけど。高校までの十八年間、嫌なこと。つらいこと。悲しいこと。たくさんあったんだけど。でも、それだけじゃなかったよ。
……それは、オレもだよ。
ヒナタくん……。
そういうこともたくさんあった。けど、それ以上に喜んだり、嬉しかったり、笑ったり。そんなことだっていっぱいあった。みんな同じだよ。
……そっか。そうだね。
……ねえあおい。
ん? なに?
オレは、初めて会った時からあおいのこと、忘れたことはなかったよ。そりゃ、ずっと頭の中にいたわけじゃないけど。
……ふふ。わたしもだよ?
だからさ、多分ビックリすると思う。あと、喜んでると思う。
ん?
昔の自分が知ったら。当たり前じゃん、とか言いながら実は内心で『うわー。マジかー。すげー』とか思ってたり。あとは、『さっすがオレ、よくやった』とか。存分に褒めてくれそう。
後者はあんまりイメージないけど……。
そう? まあ表には出さないけど、割とくだらないこと考えてるよ。あおいと一緒で。
最後に異議あり。
だからさ、この十年きっと、苦労かけたところもたくさんあると思う。なかなか、オレがはっきりしないから。
ごめんけど、苦労は一度もしたことないよ? 困ったり、悩んだり、ちょっと怒っちゃったりしたことはあったけど。
素直じゃなくていいって、昔言ってくれてたけど。でもさ、大事だと思えば思うほど、なかなか言い出せないこととかあったから。
ヒナタくん……。
だから、今言わせてくれる? 誓う前に。
……? 何を?
待たせて、ごめん。
――――。



