すべての花へそして君へ③


 ……ねえ、ヒナタくん。

 ……ん?

 この十年間、ずっとわたしの隣にいてくれてありがとう。

 …………。


 過去には、自分の存在を疎んでしまうこともあったんだけど。高校までの十八年間、嫌なこと。つらいこと。悲しいこと。たくさんあったんだけど。でも、それだけじゃなかったよ。

 ……それは、オレもだよ。

 ヒナタくん……。

 そういうこともたくさんあった。けど、それ以上に喜んだり、嬉しかったり、笑ったり。そんなことだっていっぱいあった。みんな同じだよ。

 ……そっか。そうだね。



 ……ねえあおい。

 ん? なに?

 オレは、初めて会った時からあおいのこと、忘れたことはなかったよ。そりゃ、ずっと頭の中にいたわけじゃないけど。

 ……ふふ。わたしもだよ?

 だからさ、多分ビックリすると思う。あと、喜んでると思う。

 ん?

 昔の自分が知ったら。当たり前じゃん、とか言いながら実は内心で『うわー。マジかー。すげー』とか思ってたり。あとは、『さっすがオレ、よくやった』とか。存分に褒めてくれそう。

 後者はあんまりイメージないけど……。

 そう? まあ表には出さないけど、割とくだらないこと考えてるよ。あおいと一緒で。

 最後に異議あり。


 だからさ、この十年きっと、苦労かけたところもたくさんあると思う。なかなか、オレがはっきりしないから。

 ごめんけど、苦労は一度もしたことないよ? 困ったり、悩んだり、ちょっと怒っちゃったりしたことはあったけど。

 素直じゃなくていいって、昔言ってくれてたけど。でもさ、大事だと思えば思うほど、なかなか言い出せないこととかあったから。

 ヒナタくん……。


 だから、今言わせてくれる? 誓う前に。

 ……? 何を?

 待たせて、ごめん。

 ――――。