すべての花へそして君へ③

 <OMAKE3>


 人生は、壁の連続だった。

 至って平和な家に生まれ、家族仲良く暮らしていた。
 それが崩れたのは、まだ幼かった頃。大切な妹が、この世からいなくなってしまった。

 悲しかった。今までそこにあったものが、急になくなったから。
 つらかった。家族が、気持ちが、離ればなれになっていったから。
 寂しかった。父は、まるで妹なんかいなかったみたいに、言うから。


 けれどそれは、彼女のおかげで越えられた。
 彼女が力強く、俺の背中を押してくれたから。


 ……でも、再び壁にぶち当たる。
 彼女が、選んでしまったから。俺が、この思いを断ち切れず苦しんだから。



 そうして、手を取った優さんが、今度は活を入れてくれた。

 どれだけ汚い言葉を吐かれようと。
 どれだけ難癖つけられようと。
 ……どれだけ、弱音を吐いても。

 彼は、一度だって俺の手を離そうとはしなかった。


 利害の一致? そんなもの関係ない。
 ただあの人は、人を……俺を、好きでいてくれたから。



 この壁を乗り越えた先にも、もしかしたらまた、大きな壁があるのかもしれない。
 けど、もう大丈夫だと。気負わないのは多分、それだけ尻を叩かれまくったからだ。


 デビューしてから三年。その間にも、やっぱり小さい壁、大きな壁、いろいろあったけれど。


「……ツバサくん」


 もしかしたら俺は、この時のために頑張ったのかもしれない。


「言ったでしょう? わたし、ツバサくんの夢を叶えるお手伝いがしたいって」


 それは、まさに最高のサプライズだった。