すべての花へそして君へ③

<OMAKE2>


『私は、そんなふうに思ってもらえるような人間じゃ……』

『知るかよ。……たとえお前がどんな奴であろうと、俺はどこまでもお前を追いかける』

『……それは、刑事だから……?』

『好きだからに決まってんだろ、バーカ』


「はあー……。素敵……」

「…………………………」


 とろんとした目元に、洩れた酷く熱っぽいため息。その日の夜も、オレは“テレビ”という名の浮気相手に、一際苛々を募らせていた。


「ツバサ出てないじゃん」

「ええ! 出てたよ!」

「どこ」

「旅館の女将さんだよ。実は裏の顔、情報屋やってんだよ。さっきの刑事に、彼女の過去をバラしちゃって……」


 ま、そんなこと知ってるけど。
 男役じゃねえのかよって、聞いた時真っ先に思った。まあその女将にもオネエ設定あるのかもしれないけど。

 月9ドラマの脇役。しかも男役か女役かも定かでない。
 ……まさか、ここまでゾッコンすることになろうとは。


 ピンポーン。

 夜遅くになったチャイムに、「誰?」と二人顔を見合わせる。行ってくると、彼女の頭を撫でてから腰を上げると、何故かガチャリと家の扉が開いた。


「ひなたー? いねえの?」

「……ツバサ? まさかまた?」


 言うが早いか、玄関に座り込んだ兄は、疲れた様子で手を合わせてきた。
 どうやらまた、家の前が大変なことになっているらしい。と言っても実家じゃなくて一人暮らしをしている家。


「もうあの家もアウトだね。ご愁傷様」

「早く次の家見付けねえと……」