すべての花へそして君へ③


 モデルを始めた当初は、俺の隣にあなたがいてくれるものだとばかり思っていたけれど。


“――あ? そもそもお前モデルになりたかったわけじゃねえだろ。そこんとこ履き違えんなバーカ。お膳立ては、十分してやったからな。後はお前次第だ”



「言いそびれてたんですけど」

「え? 何?」

「俺、彩芽さんの写真好きですよ」

「……! 本当!?」

「はい。だから、最初の一歩を一緒に歩けて嬉しいです」

「……翼君」

「目にもの見せてやりましょう、優さんに」

「もちろん、葵ちゃんにもね!」



 カーテンが開くと、目が開けられないほどのフラッシュの光。
 ……ようやく、ここまできた。


『それでは、ご紹介致しましょう。本日のメインゲスト。プロカメラマンの桐生彩芽さん。そして――』


 会場が騒然とする中、小さな声で俺を呼ぶ声が聞こえる。……よかった、やっぱり来てくれた。


『写真展で、数々のモデルを務めました。本日二人目のメインゲスト。新人モデルのツバサさんです』


 俺はもう、お前の手を借りはしない。
 この光の先へ。俺は、俺の道を進む。



“――そんで、奪ってこい。お前に向けられた視線を。彼女の瞳を”



 そして俺は今、ここから。お前の中の一番を奪いに行く。

 鍛えに鍛えられまくったからな。あの人に。
 悪いけど、手加減無しだ。



「――覚悟しとけ」










 Special Edition 3
 シャッター・チャンス