駅前の電気屋さんで用を済ませたわたしたちは、出てきて早々腕を組んで同じように首を捻っていた。


「びっくりするほど減ってはないけど、それでも春よりは減ってるんだよね?」

「そうだね」


 結論から言えば、5kgも減ってはいなかった。まだ、偽りの結婚式の時の方が、やつれていたと思う。


「なのに、がっつり痩せたように見えたのは……」

「やっぱり、2カップ落ちると違うもんだね」


 ユズちゃんの目ん玉が飛び出した▼


「ふ、二つも落ちたの……?」

「多分落ちてるかな。一つ下げたけどそれでも余ってるから」

「……あおいちゃん。それは女の子にとっては一大事だ。体重なんかどうでもいいくらいの重大事件だ……!」

「でも今正直体が軽くなって動きやすいんだ。やっぱり余分な脂肪はつけちゃだめだね」

「今全国の貧乳ちゃんを敵に回したよ」

「いやいや! 身長とか体型とのバランスを考えてって意味でだよ……!」


 髪の毛の一束を口の端に加えた彼女は、恨めしそうにこちらを見ていた。
 ……うん。もうこの辺でお胸さんの話は終わりにしよう。じゃないと、次の訪問する前にこのまま彼女に襲われちゃいそうだから。


「まあまあユズちゃん。今日はその辺にしておいてあげて。アオイちゃん困ってるみたいだからさ」

「こうなる前に早くカナデくん出てこいよーとは思ってたよ」

「どう考えたって出て行ける話してなかったよね」

「結局聞いてたんなら同じじゃない?」

「これでも一応気を利かせてみたんですー」


 電気屋さんの前で待ち合わせをしていたのか。それともユズちゃんから連絡を受けていたのか。
 そうやって、余裕綽々に口を尖らせながらひょっこり現れたのはカナデくん。


「かなくんかなくん! かなくんだっておっぱいは大きい方が好きだもんね!」

「ユズちゃん?! ま、真っ昼間だからね? ほら、折角アオイちゃんに会えたんだからちょっと落ち着こう……?」


 けれど、そんな彼の腕に勢いよくしがみついた興奮状態のユズちゃんのおかげで、瞬く間に余裕をこいてはいられなくなっていた。


「へー。大っきい方がいいんだ。断定なんだ。否定しないんだ」

「なんでアオイちゃんがそんな顔するの……」

「わたしは大きさなんか気にしないよ! だってそのままのユズちゃんが大好きなんだもんっ」

「ちょっと待って。どうしてアオイちゃんがユズちゃんの好感度上げようとするの……!」

「やっぱりあたし、あおいちゃんが好き!」

「ユズちゃんまで悪乗りしないで」

「え? 本気だよ? このままあおいちゃんに乗り換えちゃってもいいくらいには、本気だよ??」

「それは困る」

「それについてはわたしも困る」


「えー! だって今、お互いの愛を確かめ合ったところじゃないっ」と、今にも飛びかかってきそうな彼女は、ひとまずカナデくんの腕の中に収まった。


「ごめんねアオイちゃん。忙しいところ引き留めちゃって」

「そう言ってもらえるほど忙しくしてないから。気にしないで?」