「やばい大遅刻! 殺されるうー!!」
《アヤさん今どこ》18:01
〈ごめん今仕事終わった!〉20:59
〈本当にごめん!
今から待ち合わせ場所向かいます!〉21:00
《流石にもう待ってない》21:08
〈わーん! 本当にごめんね!
せっかく約束してたのに……〉21:08
〈もう今日は無理そう?
ちょっとでも会えない?〉21:09
〈ていうか今どこにいる?
会いに行きたいんだけど!〉21:10
[不在着信]21:15
〈杜真君ごめんよー!
献上品買ったから許しておくれよー!〉21:31
《あ、ごめん
普通に見てなかった》21:40
《彼女にデート
すっぽかされた愚痴こぼしてた》21:40
〈え? 誰に?〉21:41
《マスター。早くおいで》21:41
〈怒ってない?〉21:43
《待ってるから》21:45
そんな遣り取りをしたのは十数分前。優しさの裏には必ず悪巧みがある――そんな教えを直接体に叩き込まれていた私は、それはそれは、死に物狂いで足を動かした。
【本日、19時より貸し切り】
今日きっと、私は殺される。でも、このお誘いを無視したら、死よりも恐ろしいことが待っている。確信があったぞ私には。
「……いや、どうなのこれ」
「いいからいいから」
「絶対おかしいでしょ」
「そんなことはないだろう、正装なんだから」
……あれ? 何か揉めてる?
お店の外に割と大きめに漏れ出る声は、杜真君とマスターのものだったけれど。
「……あの。お、遅れました……?」
「あ。……いらっしゃいお嬢さん。お疲れだったね」
「……うわ。最悪なタイミング」
意を決して扉を開けると、そう言って笑顔で出迎えてくれたマスターと、何故かバーテンの格好をした杜真君が嫌そうな顔で突っ立っていた。
「その恰好の杜真君見るの久し振りだ」
「なんかハズい」
「なんで?」
「コスプレさせられてる気分」
ちょいとそれは、隣にいるマスターに少々失礼なのではないのかね。
けれど、そんなふうに言われたマスターはというと、嬉しそうに口元に笑みを浮かべ、奥へと姿を消した。本当、すぐに空気読んでくれるんだもんな。
「夕飯は?」
「まだだよ」
「悪いけど俺軽く食べたよ」
「遅かったもん。連絡もできなかったし、気にしないで?」



