すべての花へそして君へ③


 そう言って彼は、写真の中を指差しながら、人と人を線で結ぶように辿る。……これって、もしかして。


「……恋人同士?」

「の、奴もいる。でもまだの奴もいる。けど、どの奴らもちょっと危ねえの」


 その中には、恩人の子も、それから元婚約者の子もいた。


「この間、こいつと会った日。送った後の車の中で、俺思ったんだ」


 どうやら、この俺に彼女ができる日はまだまだ先の話らしいって。


「というか、いつ悪い方に傾くかもわからない今は、心配で夜も寝られねえ」

「……桐生君にとって、みんなは本当に大切な人たちなんだね」

「うん。家族みたいなもんかな」

「……そうなんだ」


 その家族の一大事とあれば、お兄ちゃんが一肌脱がないとダメだよね!


「けど、本当に好きな子いないの? ていうか、そうは言ってもまだ好きなんじゃないの?」

「……疑うねえ」

「そりゃだって、好きな人のことだから」

「……そうだね」


 腕を組み、眉間に皺を寄せて一頻り悩んだ彼は、うんと頷いた。


「確かに、好きって気持ちはある。けど、応援したい気持ちの方が、何倍も、何十倍も強いかな」


 そう言いながら、彼はまた優しい顔で、アルバムの中の一枚を撫でた。……もしかして。


「桐生君がシズルさんを疑っていたのは、恩人の子とその彼氏のため……だったりするのかな」

「……」

「……まさかね」

「……よく見てるね」

「え?」

「それも、好きな人云々と関係あるの?」


 それは、ちょっと意地悪な質問だ。まともに答えてたらきりがないと、そう思ったけれど。


「……うん、もしかしたらそうかも」

「……」


 今は、桐生君が素直に話してくれている分、逃げたり隠したりはしたくない。


「それはそうと、なんでわざわざ見せてくれたの? 嬉しいけど」

「……なんでって?」

「アルバム見せなくても、言葉だけで十分足りたのにって話」

「……前にも言ったでしょ俺」


“先輩がもうちょっと性格悪かったらよかったのに”


「先輩には、……なんか、ちゃんと知ってて欲しかったんだと思います。多分」

「……桐生君」


 ってこらこら。いちいち喜ぶんじゃない。振られてるんだから。