「……あの、ぶちょ」
「見るな」
「へっ?」
「頼むから、……今俺を見るな」
なんで、顔……真っ赤にして。な、なんか私まで伝染して顔熱いんだけど!?
「……くそ。こんなはずじゃ……」
「あ、あの……」
「!? だ、だから見るなって」
「す、すみません……」
「いや、謝らせたいわけじゃ……」
「……え、と……」
「……部長?」
明らかに様子のおかしい彼に思わず固まっていると、背後からよく知った声が声をかけてきた。
「……き」
「あ、先輩も。こんにちは、お疲れ様です」
「き、桐生か。驚かせるな」
「別に、驚かせるつもりはなかったですよ」
「そ、そうか。それはそうと、お前はなんでこんなところに」
「いや、本当にたまたま通りかかっただけなんですけど」
「そ、そうか。たまたまな、たまたま……」
「……部長」
「な、なんだ?」
「今日って、部長会があるんじゃなかったですか? 時間大丈夫です?」
「え?」と、桐生君に言われた部長は慌てて時間を確認。そして一気に青ざめた。
「あああああ!! すっかり!」
「「忘れてたんですね……」」
「忘れてはいなかった! 行ってる途中にお前が、……っ」
「……部長?」
また顔を赤くした部長は、一度顔を背けた後、ゆっくりと私の方へと向き直る。
「田雁」
「……は、はい」
「改めて、話をさせてもらうから」
「……」
「……部長怖いからって逃げるなよ?」
「に、逃げませんよ」
負けず嫌いというか、条件反射というか。売られた喧嘩を、思い切り買ったというか。
けど、次に目が合った部長は、おかしそうに。嬉しそうに。そしてどこか照れくさそうに。笑っていた。
……え。ちょっと待って。これってもしかして、……もしかするの?
「よかったですね」
「どこが!?」
「だって、全部に当てはまりますよね」
「何が!?」
桐生君曰く。部長以上に兎に角すごい人、なんて大雑把な言われ方する人いないし、普通にしてれば格好いいし、好きな子には特に意地悪で、でも案外やさしくて。
「人一倍素直じゃないけど、誰よりも素直な人じゃないですか」
「全部聞いとったんかい」
「多分ですけど、先輩以外には部長の想いなんてバレバレですし」
「……えっ!?」
「ほら気付いてない。……あの人も、本人見てないところでデレデレだもんなあ」
「……え」
空耳だ。空耳が聞こえるぞ。
部長がまさか、そんなわけ……。



