すべての花へそして君へ③


“明後日、話します”


「田雁さん!!」

「――ハッ!」

「補習中に居眠りとは……」

「きょ、教授すみません。夕べちょっと、寝られなくて」

「テストの点数一桁に続き、イイ度胸ですね……」

「ご、ごめんなさいもう寝ません!!」


 今日は、その約束の日。私が到着した時には、20時近くになっていた。

【本日18時より貸し切り】
 これって、もしかしなくても私のせい……?


「ご、ごめんなさいお待たせしました!!」

「え?」

「……あれ?」

「……えっと」


 慌ててお店の中に入ると、中には一人の女性と小さな子が二人。


「おねえちゃんだあれ~?」

「えっ! え、えっと、お姉ちゃんは……」

「ねねちゃんはね、ねねちゃんなのー」

「え?」

「それと、こっちでおねむなのはしーちゃん!」

「……ねねちゃんとしーちゃん?」

「うんうん! おねえちゃんも、ぱぱとごはんいっしょにするんだったの~?」

「え? ぱ、パパ……」


 え。じゃあもしかして。今、しーちゃんなる子を寝かしつけながら、ねねちゃんなる子を引き留めて私に「すみませんいきなり」なんて言っている、とても綺麗な人はまさか……。


「……き、桐生君の奥さんと、隠し子……!?」

「どうしてそうなるか」

「!?」

「一回頭の中覗いてみたい気がしなくもないよね。どうする? 知り合いに医者の卵いるけど」

「ど、どうするって何を?!」

「てか誰も待ってないから」

「え? ……桐生君、待っててくれてなかったの」

「違うよ。待ってなかったのは、シズルさんの奥さんとその娘二人」


 …………え。


「シズルさんってこんなに大きな子どもがいるの!?」

「そうだよー」

「わあ! 出た!」

「学生だけど、俺浪人してるからねー」

「……え? そうなんですか?」

「言っても、アヤメちゃんの二つ三つ上くらいだよ」

「そうだったんですねー」

「そっちの話、そろそろ終わってもらってもいいですかね」

「あ、ごめん桐生君そっちのけで。入る?」

「入りません」